それぞれの風土に最適化された建築――日本の民家一九五五年展

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二川幸夫の写真集『日本の民家』(文・伊藤ていじ、美術出版社)は1959年に毎日出版文化賞を受賞。本展は280点の写真から約70余点を選び、展示構成

建築は人が作るとともに、環境によって作られるものでもある。力でねじ伏せるのではない、この島国にかつてあった自然環境とのよりよい関係。これを垣間見せてくれるのが「日本の民家一九五五年展」だ。

日本を代表する建築写真家であり、建築系編集者、出版者としては忌憚のない批判精神で知られる二川幸夫。本展は彼がごく若いころ撮影した、日本の民家とその風景を展示する。世界的に評価される二川の出発点が著名建築家のモニュメント造形物でなく、作り手が匿名の庶民の民家であるのは強調されてよい。

二川は造形のうちに潜む精神といった審美性より、環境と社会条件の中でどのように働くかという機能性に焦点を合わせる。実用性のみ秀でた無骨さではない。彼のアプローチは、暮らしの中に遍在する(した)「用の美」を浮き立たせる。

京都の商家の可動式陳列棚「ばったりしょうぎ」。岡山県倉敷川ほとりの水運の必要性から生まれた耐水性の「なまこ漆喰」。愛媛県の、台風の水害対策が目的の石垣に埋め尽くされた集落。岩手県では、馬の産地の土地柄から生まれた居住部と馬屋が接合した曲屋。山形県は、過大な積雪のため通風採光に工夫を凝らした屋根。いずれも、その土地の経済、自然環境に最適化された工夫だ。電力に依存しないパッシブデザインでもある。

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2013年1月25日(金)11:56

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