CSR: 統合報告とは年次報告書とCSRレポートの合冊ではない

最近、企業のCSR担当者の間で「統合報告」が話題になっている。日本では「財務情報」と「非財務情報」の統合を指し、さらにはアニュアルレポート(年次報告書、AR)とCSRレポートの合冊を意味すると捉えられた。しかし、日本財団経営支援グループCSR企画推進チームの中村和氏は「合冊が求められているのではない」と指摘する。その真意を寄稿してもらった。

日本でいう「統合報告」とはIIRC (The International Integrated Reporting Council、国際統合報告評議会)が4月16日に公表し、7月15日まで意見を募集している<IR> frameworkのことを指します。

ところが、この<IR> frameworkが「統合報告」という日本語に翻訳されたことにより、CSR担当者の困惑の元となる大きな誤解が生まれました。

<IR>とは報告書のことではないのです。<IR>はIntegrated Reportingであり、Reportではありません。Reportingは報告するという動詞由来の言葉で、報告書を作成する作業やプロセスのことを表します。対する名詞のReportは手に取って読む報告書です。

それではIntegratedは何を意味するのでしょうか。これはintegrated thinkingという概念です。<IR> frameworkには「<IR> is guided by the Framework and by integrated thinking (p.9,概要 1.15)」と記されています。日本語文では「統合的思考」と訳されています。

事業活動には物的・人的資源、資金、自然環境や地域社会といった様々な要素が絡みます。それらの関連性を包括的に考えることがintegrated thinkingの本来の意味です。その思考プロセスを組み立てるための枠組みが<IR> frameworkとなるのです。

この原語である英語の言葉の扱い方と、日本語の解釈のズレがそれぞれ何を目的と設定しているかの違いと結びつきます。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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