水リスク対応を進める欧州企業――下田屋毅の欧州CSR最前線(36)

■ 企業の水リスクへの取り組み

英国とオーストラリアに本拠をおく多国籍の鉱業・資源グループである「リオ・ティント」は、40カ国において鉱山や工場などを操業している。リオ・ティントは、自社の事業所がある世界の各地域の水のリスクについて特定、「水マネジメント」は採掘・加工や事業所運営に不可欠として積極的に投資をしている。

水リスクは地域で異なるため、「水の制約」「水の余剰」「生態系への影響」の設定をそれぞれ実施、またリオ・ティントの水へのアプローチは、次の3つで構成されている。

1)水に関するパフォーマンスの改善
2)水資源価値の会計数値化
3)水に関するステークホルダーのエンゲージメント

リオ・ティントの環境・エネルギー・気候変動に関するグローバル・プラクティス・リーダーであるマシュー・ベイトソン氏は、「水に関するターゲットを2008年~2013年の間、製品のトン当たり淡水使用量6%削減を目標に掲げたが、3.6%削減にとどまった。この教訓を踏まえ、地域の特性をより考えた、リスクベース、定量測定、監査可能なパフォーマンスを含んだ新たな水の目標を立てていく」と話す。

ユニリーバUK行動科学部長のリチャード・L・ライト博士は、同社のCSR行動計画であるサステナブル・リビングプランを推進する上での研究の一環として、水使用に関する人間の行動について研究を発表した。

シャワーの水の使用に関する消費者の行動を測定、消費者に持続可能性と成長についての意識を生みだし、行動測定の為の洞察、評価、提案を消費者に対して実施していくとし、消費者を巻き込んで水に対するリスクに対応する目標を達成しようとしている。

英国TUIトラベル社は、2015年までの3年間の「サステナブル・ホリデー・プラン」を発表している。

これは、「目的地」「カーボン」「同僚」「顧客」の4つに分類、それぞれにサステナビリティを織り込んだコミットメントをしている。この中で、提携ホテルに対するサステナビリティ教育を実施し、環境ISOなどの認証取得を促進、宿泊客の1泊当たりのエネルギー使用(24KWh)と水の消費(400リットル)の目標を立てて推進を促している。

水資源の確保は世界の地域によっては今後より難しくなる。事業所・工場、サプライチェーン上での水リスクの管理戦略が必要となってきており、欧米の企業は、水資源に関わる活動を事業戦略上不可欠のこととしてNGOそして競合他社であっても協調行動を始めている。世界は水リスクに対応するために動き始めているのだ。

下田屋毅(しもたや・たけし):
在ロンドン CSR コンサルタント。大手重工業会社に勤務、工場管理部で人事・総務・教育・安全衛生などに携わる。新規環境ビジネス事業の立上げを経験後、渡英。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。欧州と日本の CSR の懸け橋となるべくCSR コンサルティング会社「Sustainavision Ltd.」をロンドンに設立、代表取締役。

shimotaya_takeshi

下田屋 毅(CSRコンサルタント)

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ASSC(アスク)代表理事。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。執筆記事一覧

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