(関 正雄/株式会社損害保険ジャパン CSR 部 上席顧問)
ISO26000が発行されたのは2010年の11月だから、早いものでもう2年以上になる。2012年11月には、スイスのジュネーブで世界各国の現状を共有し、今後の活用について考えるワークショップが開かれた。規格改定時期は未定だが、他のISO規格と同様、発行後5年以内には改定がなされるだろう。
ISO26000は本部が把握しているだけでも60カ国、仕掛り中も入れれば80カ国が既に国家規格に採用している。22 の言語に翻訳され、先進国だけではなく途上国でも遍く普及が進んでいる。ワークショップでは世界各国から具体的活用事例が数多く報告された。デンマークはマネジメントシステムと組み合わせた新規格を別途策定、オランダは自己宣言のツールを作った。インドネシアではCSRアワードの審査基準にISO26000を活用している。
日本でもJIS化されたほか、産業界では、経団連企業行動憲章と実行の手引きを2010年9月に改定し、その際にISO26000の思想や、人権、ステークホルダー・エンゲージメントなどの重要なポイントを取り込んで、グローバル基準と整合性がとれたものとした。また、個々の企業の取り組みも進んでいる。ISO26000活用を目に見えるようにするために、CSRレポートにおいて7つの中核主題に基づく報告を行う企業が増え、報告の枠組みとしての活用が広がっている。
しかし、ガイダンス文書としての活用方法は他にもある。創意工夫していろいろな形で活用してもらいたいと思う。たとえば、自社の取り組みと比較してギャップ分析や戦略課題の洗い出しを行う。また、当社でも合併を機に行ったが、人権方針の見直しの際に拠り所として使う。こうして戦略や方針づくりに生かすことも重要な活用方法である。さらに、経営層から第一線社員まで、社内浸透のための教育ツールとして活用するなど、工夫次第でCSR推進のさまざまな局面で使うことができる。