現代奴隷労働と企業のリスク――下田屋毅の欧州CSR最前線

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下田屋 毅
(在ロンドンCSRコンサルタント)

世界の「現代の奴隷」に関する報告書である「グローバルスレイバリー・インデックス2014(GSI)」が11月17日に発表された。これはオーストラリアの人権NGOである「ウオーク・フリー・ファウンデーション(WFF)」が発表したもので、非人道的な労働環境で奴隷のように働かされている人が現在も推定3580万人に上るとするものだ。

奴隷労働の実態は多岐にわたり、タイの漁船での奴隷労働、コンゴ民主共和国のダイヤモンド鉱山の少年作業員、ウズベキスタンの綿花摘み、インドでサッカーボールを手縫いする少女、ドレスを縫製する女性や、カカオ農園でのカカオ取りなどがあり、これらは我々の消費に結びついているもので大きなビジネスとなっている。

ILOの推計によると、こうした強制労働から生まれる利益は、年間1500億ドル(約17兆7千億円)に上る。また世界167か国を対象に行われたこの調査では、少なくとも58か国で122種類の商品がこれらの人々によって製造されていることも明らかになっている。

■先進国の中で順位が高い日本
この報告書において、現代の奴隷労働の割合が高い国トップ10は、①モーリタニア(アフリカ北西部)、②ウズベキスタン、③ハイチ、④カタール、⑤インド、⑥パキスタンコンゴ民主共和国、⑧スーダン、⑨シリア、⑩中央アフリカとなっており、全体の約7割がこれらの10か国で発生しているとしている。

地域別で比較すると、アフリカと中東が比較的割合が高く、その次にアジア、東欧、中南米、南米、北米オセアニア、西欧、北欧というようになっている。(人数の多い国トップ10は、①インド(推定1428万人)、②中国(推定324万人)、③パキスタン(推定205万人)④ウズベキスタン(推定120万人)、⑤ロシア(推定1044万人)、⑥ナイジェリア(推定83万人)、⑦コンゴ民主共和国(推定76万人)、⑧インドネシア(推定71万人)、⑨バングラデシュ(推定68万人)、⑩タイ(推定47万人)となっており、日本は22位で先進国の中では順位が高い。

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下田屋 毅(CSRコンサルタント)

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ASSC(アスク)代表理事。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。執筆記事一覧

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