企業の人権に関する法制化のゆくえ――下田屋毅の欧州CSR最前線(49)

企業に関わる人権について、企業に対して人権配慮や適切な行動を起こすことを法規制によって進めさせようとする動きが世界的に起きている。英国の調査機関のレポートによると、世界における企業に関わる人権侵害が、2008年から70%も上昇しており、労働者の権利侵害は深刻化しているという。(在ロンドンCSRコンサルタント・下田屋毅)

■先住民族の人権侵害が多発
途上国における先住民族への人権侵害も多く発生している状況もある。途上国の政府や企業が、先住民族への事前の告知と同意なしに勝手にプロジェクトを行い、多くの先住民族が、そのプロジェクトの影響で強制立退きや避難を余儀なくさせられている。

今まで先住民族のコミュニティーは、そのような企業活動のコミュニティーに対する悪影響について抗議活動などを行うとともに、調停機構を通じて、対話や交渉を政府や企業と行ってきたが、先住民族のコミュニティーの抵抗を阻止するために、国や企業による大規模で残忍な弾圧が行われていることも報告されている。

このような状況下において、近年企業の人権侵害を食い止めようとする動きとして法による規制や国際基準の整備が進められてきている。

国際基準としては、2011年に国連から「ビジネスと人権に関する指導原則」が、保護・尊重・救済のフレームワークとして、国家・企業が自発的に取り組むものとして発行された。同じく2011年にOECD多国籍企業ガイドラインの改訂、また2010年にはCSRに関する国際基準である「ISO26000」が、「ビジネスと人権に関する指導原則」の影響を受けて発行されている。

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下田屋 毅(CSRコンサルタント)

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ASSC(アスク)代表理事。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。執筆記事一覧

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