編集長コラム)CSRとサステナビリティを巡る一考察

CSRは「経営を改善するツール(手段)」であり、サステナビリティとは、「地域社会、さらには地球規模において、さまざまなステークホルダーとともに持続可能になる」という「ビジョン」「ゴール」「あるべき姿」です。

このように(A)は、手段と目的を混同した表現になっています。正しくは、「サステナビリティを実現するために、企業はCSR活動に取り組む必要がある」でしょう。

さらには、CSRは「会社の視点」というよりは、社会からの要請やニーズに応える企業の社会対応力が問われているのであり、(A)のコメントにあるような、企業から一方的に見た視点というニュアンスはありません。

次に(B)です。
「企業が得た利益の一部を慈善活動の一環として社会に還元する」という言い方は、CSR全体を指すのではなく、寄付やボランティア活動など、CSRのあくまで一部である「社会貢献」(フィランソロピーやチャリティ)の分野を指すものです。

CSRと社会貢献を同一視する考え方は古くはシカゴ大学のミルトン・フリードマン教授に端を発しますが、現代ではほぼ否定されていると考えて差し支えありません。

2010年、ISO26000はCSRを次のように定義しました。「組織の決定及び活動が社会及び環境に及ぼす影響に対して、次のような透明かつ倫理的な行動を通じて組織が担う責任:ーー健康及び社会の繁栄を含む持続可能な発展への貢献。ーーステークホルダーの期待への配慮。ーー関連法令の遵守及び国際行動規範。ーー組織全体に統合され、組織の関係の中で実践される行動」

このように社会からの期待や様々規範やニーズに幅広く答えることこそが、CSRの全体像なのです。そして企業がCSRに取り組むためには、経営者や従業員のCSRリテラシーを高めることが重要です。世の中にどんな社会的課題があり、どのような状況なのかを大まかにでも知っていることが大切です。

さらには近年、「CSV(共通価値の創造)」が注目されるようになりました。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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