相変わらずの「難民鎖国」、19年認定わずか44人

法務省は3月27日、「令和元年における難民認定者数等について」を発表し、2019年の難民認定数は44人だった。難民認定申請を行った外国人は10375人で、前年に比べて118人(約1%)減少した。認定率は0.42%(1000人に4人)だった。難民とは認定しなかったものの人道的な配慮を理由に在留を認めた外国人は37人。認定NPO法人難民支援協会(東京・千代田)は「難民認定のプロセスに問題がある」との声明を発表した。全文は次の通り。(オルタナ編集部)

本日、法務省より2019年の難民認定数は44名と発表されました。

難民の審査は、人種、宗教、国籍、政治的意見やまたは特定の社会集団に属するなどの理由で迫害のおそれがあり国へ帰れないと訴える人の滞在の可否を決めるもので、人の命に関わります。しかし、日本でこれを担っている出入国在留管理庁(以下、入管庁)の審査には多くの問題があり、送還に深刻な危険を伴う人にも滞在を認めない判断が下され、結果としてこのような少ない難民認定数に留まっています。

審査では、難民が危険に直面する国へ送り返されることがないよう、本人の供述や出身国の情勢などから迫害のおそれを適切に評価することが求められますが、入管庁の評価には、次のような傾向が多く見られます。

迫害のおそれを裏付ける「客観的な証拠」が過度に重視され、提出できないと難民認定は難しくなります。例えば、政権批判をしたことで逮捕・拷問された場合、逮捕状等が証拠になりますが、適切な手続きを経て逮捕する国ばかりではないことや、証拠を持ち出すことが極めて危険であることを考慮すれば、証拠を提出できない可能性は十分に考えられます。

また、証拠を提出しても「証拠価値がない」とされる場合もあり、その判断基準は明らかにされていません。例えば、女性の権利を守る活動をやめるよう命じられ、従わなかったため、警察から性的暴行を受けて逃げ出したエチオピア出身の女性は、証拠として、女性協会の会員証、出頭要請書、指名手配書を提出しましたが、証拠価値がないとされ、難民不認定となりました。

この入管庁の判断の是非を争う裁判では、それらの証拠が本物と評価され、難民不認定処分は取り消されました。この勝訴によって女性は難民認定され、送還を免れましたが、このように弁護士を立てて数年におよぶ裁判を闘える人はごく一握りです。多くの人は収容・送還の危険に怯える暮らしを続けることになります。

本人の供述の評価にも問題があります。例えば、目の前で家族が暴行・殺害されたケースでは、体のどこがどのように傷ついていたか詳細な説明を求められ、数時間に及ぶ数回の面接で若干でも異なる描写をすれば、一貫性なしと評価されるなど、心の傷が供述の内容に影響しうることへの理解に欠けています。

難民の審査にあたって、難民の置かれた特殊な状況による困難を鑑みて、証拠による裏づけはあまりに厳格に求めてはならないことや、精神状態を考慮する必要性は、いずれも国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が各国に向けて発行している『難民認定基準ハンドブック』で注意喚起されているポイントです。

このほかにも、供述が録音されず、入管庁職員が作成した調書が正確か確認することが困難である点や、一次審査の面接に代理人の同席が認められない点など、手続きの公正さに問題があります。

これらの課題を残して難民を適切に保護することはできません。難民認定数がわずか44名という結果は、本来速やかに難民として滞在を許可されるべき人も不認定としていることを意味します。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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