ツリーハウスや里山再生に「千葉市都市文化賞」

千葉市はこのほど、「千葉市都市文化賞2019」の受賞作品を発表した。同賞は2011年度、魅力ある景観形成を実現するため、街並みや広告物、地域や街づくりの活動などの表彰制度として始まった。今回は61点の応募のなかから、グランプリのほか、「景観まちづくり部門」「景観広告部門」「建築文化部門」の3部門で優秀賞7作品が選ばれた。(オルタナ副編集長=吉田広子)

グランプリに選ばれた「椿森コムナ」のツリーハウス

グランプリに選ばれたのは、千葉市中央区にあるパブリックスペース「椿森コムナ」だ。ウッドチップや枕木が敷かれた広場には、ツリーハウス、タイニーハウス(小屋)、エアストリーム(キッチンカー)などが設置され、朝は近所の市民がラジオ体操後の休憩に訪れ、週末には子育てファミリーなどで賑わっているという。

栗生明・千葉市都市文化賞表彰選考部会部会長は「新しい都市文化の萌芽を強く感じた。『椿森コムナ』は住宅地の中に残された屋敷林跡を、地域資産として地域住民と有効活用を図ったもの。既存のイチョウやカシの樹上に、廃材を活用して作られたツリーハウスやタイニーハウス。さらに移動可能なテント小屋やキッチンカーやトイレなどによって生み出される祝祭的な空間は、失われつつある地域コミュニティの再活性化に大きく寄与している」と評価した。

千葉市若葉区にある里山「堂谷津の里」では、田植えイベントなどが開かれている

「景観まちづくり部門」優秀賞を受賞したのは、千葉市若葉区にある里山「堂谷津の里」で環境保全活動を行うNPOバランス21だ。同NPOは2011年、耕作放棄された田んぼの再生プロジェクトを開始。もともとグラフィックデザイナーをしていた代表の佐藤聰子さんは、農業経験はなかったものの、仲間の協力を得て耕作放棄地の開墾を進めた。

佐藤さんは「今思えば大変だったが、やった分だけどんどん良くなる面白さがあった。1年目で無農薬のコメを収穫できたときは、みんなニコニコ顔でうれしそうだった」と振り返る。

荒れた山林の手入れも進めていくと、ノウサギやタヌキが姿を現すようになった。川ではニホンアカガエルが産卵し、その数は増えているという。子ども向けに田植えの体験イベントや山の音楽祭なども開催している。

こうした取り組みが、「かつての里山の再生ではなく、次のステージの『何かに成っている』という意味では『再成』という見立てが相応しい」と評価された。

佐藤さんは今回の受賞を受けて「私たちが取り組んでいるのは、あくまで一部に過ぎない。地域に住む人たちが頑張っているからこそ、全体の景観が保て、今回の受賞につながった。『堂谷津の里』を再生しながら、未来のこどもたちに活用してもらえるように、次世代につなげていきたい」と語った。

「千葉市都市文化賞2019」の受賞者は次のとおり。

▼グランプリ
・椿森コムナ(所在地:中央区椿森1丁目、施主:拓匠開発)

▼景観まちづくり部門 優秀賞
・YohaS(所在地:中央区弁天3丁目、団体:花びと会ちば、拓匠開発)
・堂谷津の里(所在地:若葉区谷当町、団体:バランス21)

▼景観広告部門 優秀賞
・幕張ベイパークのサイン(所在地:美浜区若葉3丁目、施主:幕張新都心若葉住宅地区街づくりグループ、イオンリテール)

▼建築文化部門 優秀賞
・都賀の家(所在地:若葉区都賀、施主:H・M、設計:三好礼益+須藤建設、施工:須藤建設、撮影:SUZUKI YOSHIMI PHOTOGRAPHY)
・PSR 矢作町(所在地:中央区矢作町、施主:エーエスキャピタルインベストメント、設計:ツズキオフィス、施工:横田建設マネジメント、撮影:雁光舎・野田東徳)
・千葉駅 ・千葉駅ビル(所在地:中央区新千葉1丁目、施主:東日本旅客鉄道、施主:千葉ステーションビル、撮影:三輪晃久写真研究所)
・坂口電熱 千葉ロジスティクスセンター(所在地:若葉区上泉町、施主:坂口電熱、設計・施工:竹中工務店、撮影:ミヤガワ 塚田茂男)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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