原田勝広の視点焦点:コロナ禍で国連外交の再構築を

原田勝広
オルタナ論説委員

国連の世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長の辞任を求める署名が世界で100万人に達しています。中国寄りだというのが理由です。批判の急先鋒は米国のトランプ大統領で「WHOは中国の誤った情報を押し付け、人と人の間では感染しないし、中国への渡航禁止は必要ないなどと主張した」と憤慨し、分担金拠出の停止どころか、WHO脱退の可能性までほのめかしています。

WHOの予算は国連加盟国に義務付けられている分担金と任意拠出で賄われます。後者はビル&メリンダ・ゲイツ財団、GAVIアライアンスなど民間団体も顔を連ねていますが、米国分は全体の約15%もあり停止となれば大きな痛手です。

もちろん、テドロス事務局長も中国も反論していますが、WHO年次総会では、「公平で独立した包括的な検証」を受け入れることが決まりました。米政権内には「新型コロナの発生源は武漢のウイルス研究所」という認識が背景に存在するようですが、トランプ氏の言動は自身のコロナ対策の遅れの責任転嫁や大統領選挙への思惑もあるといわれています。

発生源などの真相解明には時間がかかりますが、今回のコロナ騒ぎで明らかになったことが3点あります。一つはグローバル化で人やモノが世界規模で移動する世界では感染症対策は個々の国では対処しきれず、国連機関であるWHOの役割がますます大きくなっていること。二つ目はその期待の大きさ、あるいはSDGs(持続可能な開発目標)で注目を集めているにもかかわらず、国連は不完全な組織であるということです。

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原田勝広
オルタナ論説委員
日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。明治学院大学教授に就任後の専門は国連、CSR, ESG・SDGs論。2018年より現職。著書は『CSR優良企業への挑戦』など多数。

2020年5月27日(水)11:06

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