原田勝広の視点焦点:社会起業家の現在地

原田勝広
オルタナ論説委員

一時、時代のトレンドだった「社会起業家」という言葉を聞かなくなって久しい。町田洋次著「社会起業家」が世に出たのが2000年、渡邊奈々著「チェンジメーカー」の出版が2005年です。

当時、マザーハウスの山口絵理子、フローレンスの駒崎弘樹、カタリバの今村久美、かものはしプロジェクトの村田早耶香といった若者がさっそうと登場、大活躍したものです。みなさん、「思い」が強く、株式会社マザーハウス以外はNPO法人ですが、その後、CSRからCSVという時代の潮流の中で、「思い」より「ビジネス手法」に重きが置かれるようになりました。そして社会起業家から「社会」が取れ、単に起業家と呼ぶ時代になりました。それでも、起業家の社会的課題にかける思いは依然強く、ほとんどの起業家が社会性を内包していたのだと思います。

今回、進化した社会起業家に出会えたのは、SIIF(一般財団法人社会変革推進財団)が、社会起業家、3社に7,000万円の資金支援を決定したからです。社会的課題にチャレンジしているのはNPOだけではない。株式会社でも支援していこうというプログラムです。資金の提供だけでなく、社会的インパクトの最大化を図る伴走支援も行います。

支援対象はどんな社会起業家なのか。

ひとつは、エーテンラボ株式会社です。会社のミッションで「テクノロジーでみんなを幸せにする」とうたっているだけあって、三日坊主を防ぐデジタル・ピアサポート・アプリ「みんチャレ」を武器にしています。

課題として考え、今も中心的に取り組んでいるのがなんと糖尿病です。今や3人に1人は生活習慣病患者及び予備軍といわれますが、糖尿病はそのひとつ。食事、運動、薬で治療しますが、自覚症状もないことから、患者の多くが治療を中断してしまうといいます。そうなると、病気が悪化し、医療費が増加、医療ソースが不足するという社会にとって厄介な事態になってしまいます。途中でやめてしまわないで、継続的な医療ケアが必要なんです。

そこで登場するのが、みんチャレ。5人1組でチームを作り「ゆるいつながり」で一緒に改善に取り組むアプリです。一人では頑張れないが、環境が変われば頑張れます。お互いにアドバイスや工夫を話し合います。「〇〇歩達成」「雨の日も歩きました」「数値が改善しました」「スゴーイ」、こんなやり取りや、散歩ルートの話、写真を撮影して送るなどなどで、三日坊主にならずに済むというわけです。

ダイエットや勉強、趣味まで、他にもカテゴリー別にアプリがたくさん用意されています。チームは9,000もあるといいますから、大変な数です。

長坂剛社長はソニーの出身。社内で起業家を育てる「ソニー・シード・アクセラレイション・プログラム」に応募して習慣化アプリを開発しました。会社設立は2016年と新しいですが、将来の上場を目指しています。

SIIFは「単に食事改善とか運動のアプリはいっぱいあるが、継続を目的にしたところがユニーク」と評価しています。ユーザーを増やすのはもちろんだが、投資家をどう確保するかが、今後の課題と言えそうです。

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原田勝広
オルタナ論説委員
日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。明治学院大学教授に就任後の専門は国連、CSR, ESG・SDGs論。2018年より現職。著書は『CSR優良企業への挑戦』など多数。

2020年7月22日(水)9:30

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