パイナップルの葉から皮革製品、環境と動物にも配慮

日本でもヴィーガンレザーを

岑山氏は出産後退職し、2020年6月、ラエステレンを立ち上げた。約10年間バッグデザイナーとして活動する。

ラエステレンの岑山萌子代表は、大学卒業後、日本国内の専門学校で鞄の縫製・デザインを、フランスでプロダクトデザインを学んだ。その後、日本の鞄会社に入社し、企画デザインや海外営業を担当した。

3年前、妊娠に伴う体調の変化から排気ガスや化学物質のにおいで具合が悪くなった。

それ以来、バッグや財布に使われるクロムなめし(化学薬品を使った革のなめし方法)の革や、合成皮革などの素材のにおいにも苦手意識を持った。同時に、ファッション産業の大量生産、大量破棄のサイクルや環境への影響にも問題意識があったので、天然素材の理想的なバッグを探すが国内で見つけられなかったという。

そこで出会ったのがピニャテックスだった。廃棄されるパイナップルの葉を利用するため環境負荷も少なく、顔料もオーガニックを使う。また、パイナップル農家にとっては葉も収入源になるという好循環を生み出す素材だという。「世界では注目されていたが日本では見かけず、使ってみたいと思ったのがきっかけ」だと話す。

アニマルフリー素材の魅力とは何か。岑山氏は「動物への配慮」と「環境への配慮」を挙げる。

「多くのファッションブランドは、動物の苦痛に配慮するとの観点から動物の毛皮を扱わなくなりました。革は食用肉の副産物という考えもありますが、動物の苦痛が伴うことには変わりはありません」

「もう1つは環境面ですが、現在、世界の畜産によるCO2排出が気候変動に影響することが指摘されています。特に、鞄や財布に使われる牛は、げっぷによって大量のメタンガスを排出するといいます」

岑山氏は、新しいトートバッグと財布の販売を計画している。今後もトレンドを意識したサイクルの早いものづくりではなく、消費者の要望があったときや、自然にアイデアが湧いたら新しい商品を作る「ゆったりしたものづくり」を目指す。

消費者のアニマルウェルフェアや環境問題への関心が広がるなかで、ヴィーガン素材の需要拡大は期待できそうだ。

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