日立製作所が統合報告書を半減、情報開示量は落とさず

記事のポイント


  1. 日立製作所はこのほど、最新の「統合報告書」を公開した
  2. 昨年の106ページから53ページとページ数を半分に減らした
  3. 統合報告書の目的を見直し、情報開示量を落とすことなく、刷新した

日立製作所はこのほど、統合報告書を公開した。昨年の106ページから53ページとページ数を半分に減らした。担当者は、「情報開示量を落とすことなく、読み手にとって骨太なレポートに仕上げた」と話す。(オルタナS編集長=池田 真隆)

同社が統合報告書の大幅な刷新に踏み切ったのは、約10年に及ぶポートフォリオ改革に区切りがついたからだ。同社はリーマンショック後の2009年3月期に、国内製造業で最大となる7873億円の赤字を出した。

それ以来、社会課題を解決する「社会イノベーション事業」に舵を切った。抜本的な構造改革を10年以上行い、2022年度には上場子会社はゼロになった。改革に区切りをつけた同社は、「サステナブル成長」を掲げた。

2024年中計では、主要目標の一つである売上高の年平均成長率を「5~7%」と設定した。オーガニックグロースで持続可能な成長を目指す。

日立製作所の2024中計の主要KPI

社会イノベーション事業で価値を創造するための経営戦略や施策を厳選して、統合報告書に記載した。同社の谷内由布子・インベスター・リレーションズ本部担当部長は、「情報開示量は落とすことなく、読み手にとって骨太なレポートにすることが一番の狙いだった」と話す。

情報開示の国際潮流を踏まえ、機関投資家と対話を生み出す媒体に仕上げた。サステナブルな成長に向けて、デジタル人財の獲得・育成の強化、イノベーション力を高めるDEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)目標などを掲載した。

「対話につなげることで企業価値向上と価値協創の好循環をつくることを目的に発行している。読みやすさ・理解しやすさ・対話への活用を実現するため、刷新した価値創造ストーリーを中心に、サステナブルな成長を実現する経営戦略・施策についてコンテンツを厳選した」(谷内氏)。

ウェブコンテンツとの連携も強化へ

今回のポイントは、情報開示量を落とさずにページ数を半分にした点だ。同社は、コーポレートレポーティング(サステナビリティレポート・有価証券報告書・統合報告書)の発行目的やすみ分けを再定義した。

(サステナビリティレポート・有価証券報告書・統合報告書の発行目的とすみ分けを再定義

昨年から、統合報告書と同日に「サステナビリティレポート」を公開している。同レポートの主な対象はESG投資家だ。ESG評価に必要な定量・定性データの開示、マテリアリティの進捗などを報告する媒体として整理した。統合報告書との連動性をより強化し、両媒体で重複コンテンツを減らした。

経営戦略や決算説明会などの会社説明会資料や動画などのウェブコンテンツへのURLとも連携を強化した。

谷内担当部長は、「価値創造ストーリーにフォーカスしたことや、中長期の経営戦略に関するCEOや取締役のメッセージに対して、ポジティブな反応を多数頂いている」と話した。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #ESG#脱炭素

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