COP28の論点(1): 「化石燃料の段階的廃止」に合意できるか

記事のポイント


  1. 11月30日からCOP28がアラブ首長国連邦(UAE)で開幕する
  2. なかでも化石燃料の「段階的廃止」に向けて合意できるか、注目が集まる
  3. 日本は、「削減対策を講じた石炭火力は認めるべき」との立場を取る

11月30日からCOP28(国連気候変動枠組条約第28回締約国会議)がアラブ首長国連邦(UAE)で開催される。なかでも化石燃料の「段階的廃止」に向けて合意できるか、注目が集まる。日本は、「排出削減対策を講じていれば、石炭火力の稼働を当面は認めるべき」との立場をとっており、環境NGOなどから「巨大な抜け道だ」と厳しく批判されている。(オルタナ編集部=北村 佳代子)

温室効果ガス(GHG)の大量排出源である化石燃料については、2021年のCOP26で、「排出削減対策が講じられていない(unabated)」石炭火力の段階的「削減」で合意した。

2022年のCOP27では、この合意を石油・ガスにも拡大する働きかけがあったものの、押しとどめられ、進展はなかった。

今回、「段階的廃止」に向けた動きが石油・ガスにも拡大されるかは一つの論点だ。

一方、普遍的な定義が存在しない、「対策がされていない(unabated)」という言葉の解釈をめぐっては、議論が起きている。石炭やガスでも「対策をしていればよい」と解釈できるからだ。

「unabated」の定義に近しいものとしては、科学的かつ普遍的に受け入れられているIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書の脚注に記載がある。

それによると、「unabated」とは、「化石燃料の生産や使用においてライフサイクルで、火力発電の場合、90%以上の温室効果ガスを削減したもの」とある。

例えば、日本が進める火力発電への20%のアンモニア混焼では、このレベルの削減には至らない。

気候変動シンクタンク・E3Gのカトリーン・ピーターセン上級政策アドバイザーは、「日本は、どのようなものでも排出量削減につながれば、対策を講じたことになると主張するが、これはおかしなほど低レベルの排出量削減であり、適切な対策を講じた化石燃料とみなすべきではない」と非難した。

産油国が議長となるCOP28で、化石燃料の段階的廃止を合意できるのか。日本としては、この「unabated」の議論の行方も含めて注視が必要だ。

北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

オルタナ副編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部。

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キーワード: #COP28

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