成熟経済社会におけるあるべき「サステナ経営」とは

記事のポイント


  1. 関経連などが多様なステークホルダーを意識した経営への転換を訴求した
  2. 成熟経済社会では付加価値分配計算書(DS)による価値の適正分配が重要だ
  3. 持続可能な社会の発展を目指すため、サステナ経営とDS経営の両輪を掲げよ

前回のコラムでは、日本企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目的とするコーポレートガバナンス改革の実質化について取り上げました。2024年に予定されていたコーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)の定期改訂が見送られ、金融庁や東証が企業に対し、「改革の実質化」に向けた具体的な対応を求める動きが鮮明になってきました。(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家=遠藤 直見)

■関経連によるコーポレートガバナンス・コードに関する意見書

3月には東証が「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請、4月には金融庁が「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム」を公表しました。

このような状況下で、関西経済連合会(関経連)などは9月11日、意見書『コーポレートガバナンスに関する提言』 『マルチステークホルダー資本主義に基づくコーポレートガバナンス・コードの提案』を公表しました。

本意見書では、株主を含む多様なステークホルダーの価値を尊重したCGコード改訂の意義を訴求しています。この背景には、資本主義のあり方を見直す動きや企業経営を巡る潮流の変などがあります。特に1970年代以降の米国を中心とする新自由主義的な考え方の強まりへの懸念がありました。

改訂の基本的な考え方については、「企業は、中長期的な視点に立った戦略的な経営のもとで企業価値を向上させるとともに、各社の経営理念を核として、顧客・ 従業員・取引先・地域社会・株主など、すべてのステークホルダーに対して公平でバランスのとれた価値の分配を行うことが重要である」としています。

具体的には、現行のCGコードの基本原則1「株主の権利・平等性の確保」と基本原則2「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」を統合しました。 新たな基本原則1「多様なステークホルダーとの中長期的な協働、適切な価値の提供」とした上で、マルチステークホルダーを等しく重視する内容とすべき、ということです。

CGコードの関連する「原則」や「補充原則」にもマルチステークホルダーとの協働の重要性が盛り込まれるべきとしています。

コンプライ・オア・エクスプレイン手法、政策保有株式、買収提案者、独立社外取締役などに関する条文修正もあります。その他、関連する法・規制・開示制度に関する見直しなど提言は多岐に渡ります。ここでは割愛します。

■多様なステークホルダーを意識し、資本収益性を追え
■ 「成熟経済社会」における「価値の適正分配」とは
■あるべき「DS(Distribution Statement)経営」の姿
■サステナ経営とDS経営を掲げ、持続可能な社会の発展へ

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遠藤 直見(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家)

遠藤 直見(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家)

東北大学理学部数学科卒。NECでソフトウェア開発、品質企画・推進部門を経て、CSR/サステナビリティ推進業務全般を担当。国際社会経済研究所(NECのシンクタンク系グループ企業)の主幹研究員としてサステナビリティ経営の調査・研究に従事。現在はフリーランスのサステナビリティ経営研究家として「日本企業の持続可能な経営のあるべき姿」についての調査・研究に従事。オルタナ編集委員

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キーワード: #サステナビリティ

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