日本も存在感、CSR報告書の新ガイドライン「G4」 ――下田屋毅の欧州CSR最前線(29)

G4の発表の約1カ月前となる2013年4月16日、欧州委員会は、非財務情報に関する報告の義務化に関する提案書を欧州議会に提出した。

これは、欧州で活動をしている従業員500人以上の大企業が、それぞれの年次報告書に社会、労働、人権の尊重、反汚職と賄賂の問題、および取締役会の多様性に関する情報開示義務が発生することを意味する。

現状では、欧州の経済界やドイツで成立に反対する動きがあるようだが、もしこの法案がこのまま成立すると、上場企業は2017年から、非上場企業に対しても2018年から開示義務が適用されることになる。

非財務情報の開示は、欧州では、デンマーク、フランス、スウェーデン(国営企業のみ)が国内法において既に法制化されている。このGRIの国際会議においても、非財務情報の開示に関する欧州指令の動向についての全体セッションが開催されており、関心の高さが伺えた。

G4は、自社のCSRを戦略的に推進する中で、サステナビリティ報告書をどのように位置付けるのか、実行が伴う形でのCSRの報告ができるように意図して作られているようだ。サステナビリティ報告書は、あくまでもステークホルダーに自社のCSR活動を伝える一つの媒体でしかない。

ステークホルダーとのコミュニケーション、エンゲージメントをより活発に実施していくツールの一つとしてG4の研究を始めてみてほしい。(在ロンドンCSRコンサルタント下田屋毅)

◆日本語訳発行について
G4の日本語訳の発行については、現時点では2014年1月を予定している。G4(英語版)は次のリンクからダウンロードが可能
https://www.globalreporting.org/reporting/g4/Pages/default.aspx

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下田屋 毅(CSRコンサルタント)

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ASSC(アスク)代表理事。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。執筆記事一覧

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