取材班は「放射能汚泥」や原発輸出など、原発をめぐり噴出する問題を取材。本書の最後で、京大原子炉実験所の小出裕章助教は「多くの人は、事故は収束したのではないか、もう大丈夫なのではないか、そう思ってしまっているのではないでしょうか」と語る。しかし実際には汚染水処理は破綻し、「子ども・被災者生活支援法」は被ばくした人々らの要望をほとんど聞き入れることなく基本方針が閣議決定された。
国民主権が明記されている現憲法下では、天皇は政治に関与する権限を持たない。山本議員の行動は軽率だが、山本議員に処分が下されても東電原発事故をめぐる状況はそのままだ。山本議員はもとより、全ての国会議員には政治の力で事故を解決に導く責任がある。
今すべきは、本書にある「原発依存国家」の在りようが、多くの人々の被ばくや原発労働者の窮状をもたらしていることを思い起こし、これからも原発に依存して生きるのか、そうではない道を選ぶのか、について、それぞれが真剣に向き合うことだろう。
1 2