記事のポイント
- ISSBのエマニュエル・ファベール議長は「ESGの時代は終わった」と発言
- ISSBはサステナ関連財務情報の「フレームワーク」を策定した団体だ
- ESGを推進してきた団体のトップによるこの発言をどう受け止めるべきか
IFRS財団のエマニュエル・ファベール・ISSB議長は2026年5月末、ドイツ・フランクフルトのカンファレンスで講演し、「最も多く耳にするのは『ESGの終わり』という言葉だ」と冒頭で切り出しました。ファベール議長は、「ESGという言葉の時代は終わり、いま語られるのは地政学リスクだ」と続けました。この発言をどう受け止めるべきでしょうか。(トーマツ 非財務・サステナビリティ保証統括部パートナー=小口誠司)

ファベール議長は確かに、「ESGの終わり」について触れましたが、彼の講演はそこで終わりません。
世界の分断が進み、原材料や物流、市場へのアクセスが断たれるリスクが高まる時代。だからこそ、自社の事業がどこで何に依存し、どんなリスクと機会を抱えているかを見渡すサステナビリティ情報は、「以前より一層重要になっている」というのです。
しかも今は、企業の価値の多くがブランドや技術、人材といった目に見えない無形資産で測られる時代です。財務諸表の数字だけでは、会社の実態は見えません。
だからこそ、それをサステナビリティ情報で補う意味が増している、そういう整理です。実際、ISSB基準を法律に取り入れる国は、1年前の30から今や40以上へと増え、毎月広がっています。
つまり、ESGという言葉そのものは勢いを失いつつある。けれども、その言葉が本来やろうとしていたことは、なくなるどころか、ますます重要になっています。逆風が吹いているのはESGという言葉であって、中身ではないのです。
学術の世界でも実務の現場でも、私はそれを実感しています。では、そのESGの中身を大事にできている会社と、そうでない会社は、何が違うのか。同じ取り組みをしても、なぜ企業価値向上という成果に差が出るのか。この問いを考えるヒントを、最近の議論からご紹介します。
■サステナは企業価値を高めるのか

