■洋上風力発電の技術は日本がリード
——全国で洋上風力発電の実証実験がスタートしています。洋上風力発電の可能性はどのようにお考えですか。
牛山:ドイツや北欧の近海は遠浅が多く、洋上風力は海に突き立てるタイプの風車が主流ですが、日本近海はすぐに深くなるので、海に浮かべる洋上浮体式がメインになります。
課題は、まだ実証実験中ということもありコストが高いことです。しかし、陸上には土地にまつわるさまざまな制限があるため、10年ほど先には洋上が主流になっていくはずです。
2014年には福島沖に7メガワットの浮体式風車を2基設置する予定です。これは世界最大のものになります。あまり知られていませんが、日本の浮体式風力発電の技術はすでに世界をリードしているのです。この技術を蓄積して、世界に輸出できる産業にしていくことも可能です。
最大の問題は、政府が消極的だということです。自然エネルギーを重視するという方針を決めないので、企業は大幅な投資ができないできました。人材も技術も、企業が投資すれば育っていきます。
そのためには、国が目標を立てる必要があります。日本にはエネルギー政策のビジョンが欠けています。先延ばしを続けて、原発のような「トイレなきマンション」を作り続けてきました。これを転換するために、国が本気で自然エネルギーの旗振り役をしていかなければなりません。
牛山泉(うしやま・いずみ):工学博士。2008年より足利工業大学学長。1970年代から一貫して風力発電の研究開発に携わっている。日本機械学会畠山賞、文部科学大臣賞などを受賞。