CEOが自社のCSR・サステナビリティについて語る――下田屋毅の欧州CSR最前線(40)

セインズベリーは、既にMSC認証を受けた魚介類や、フェアトレードのバナナ、紅茶、コーヒーなどを世界で一番積極的に活用・販売しているスーパーマーケットだということだが、「近い将来、現在の消費者が望んでいる良品質で、持続可能で、かつ手頃な価格の製品がサプライチェーンから継続して供給がなされるのは難しくなるので、その部分にはさらにこれから正しい投資が必要となる」と述べた。

タイルカーペットの世界的企業であるインターフェイス(欧州・中東・アフリカ)社のCEOのロブ・ボーガード氏が登壇。ボーガード氏は2011年にインターフェイスに参画。

ボーガード氏は「インターフェイスのイノベーションに関する取り組み、2020年の目標をサポートするために、従業員全体にその考え方を浸透させるべく、クエストと呼ばれる推進プログラムを開発、全従業員を繋げる共通の目標を一緒に持ち日々実行している」と語る。

インターフェイス社といえば、創業者であり前CEOのレイ・アンダーソン氏がサステナビリティのリーダーとして牽引していたのが有名だ。1994年、レイ・アンダーソン氏はポール・ホーケンの著書『The Ecology of Commerce』を読んだ後、「自分が『地球の略奪者』であることに気が付いた。

このまま『取る、作る、捨てる』というビジネスモデルを維持するのであれば、環境、社会に深刻な影響を与える。今後は『地球を無謀に扱い、生態系を衰退させている犯罪者』として投獄されることもある」と自らを犯罪者と扱い、この旧来のビジネスモデルから新しいモデルへの移行を実行し、また他の経営者にもその行動の必要性を促した。

これを表すコミットメントが、「ミッション・ゼロ」という7つの要素を含むコミットメントで、「2020 年までに環境に与える負荷をなくす」というもので現在もインターフェイス社が取り組んでいるものだ。残念ながらレイ・アンダーソン氏は、2011 年に亡くなったが、彼が築いた理念は遺産としてしっかりとインターフェイス社に引き継がれているという。

このように海外では、CEOが自社のCSRおよびサステナビリティに対する考え方、また取り組みに関して自らの言葉で語っている。今回のこのイベントへの日本人での参加は私 1 人だけだったが、今後はこのようなイベントで、日本の社長あるいは現地法人の社長など自らが、海外のステークホルダーへ向けて、自社のCSRやサステナビリティの取り組みを語る、あるいは、持続可能な社会の構築をするためにCSR、ひいてはサステナビリティの重要性を訴えるなど、発信をしていただければと思う。

下田屋毅(しもたや・たけし):
在ロンドン CSR コンサルタント。大手重工業会社に勤務、工場管理部で人事・総務・教育・安全衛生などに携わる。新規環境ビジネス事業の立上げを経験後、渡英。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。欧州と日本の CSR の懸け橋となるべくCSR コンサルティング会社「Sustainavision Ltd.」をロンドンに設立、代表取締役。

shimotaya_takeshi

下田屋 毅(CSRコンサルタント)

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ASSC(アスク)代表理事。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。執筆記事一覧

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