記事のポイント
- 英国の非営利団体CDPなどは企業の脱炭素化に関するレポートをまとめた
- スコープ3の脱炭素化に取り組むことで、コストの倍の利益が得られるとした
- ネットゼロを目指すことでの潜在的利益は約25兆円に上ると予測した
英国の非営利団体CDPはこのほど、英国に拠点を置く世界最大の金融機関HSBCとサプライチェーンの脱炭素化に関するレポートを公開した。そのレポートでは、スコープ3も含めたサプライチェーン全体の脱炭素化に必要なコストは約940億米ドル(約14兆円)と試算したが、潜在的利益はその約2倍の1650億米ドル(約25兆円)に上ると予測した。(オルタナ副編集長=池田 真隆)
CDPとHSBCが公開したレポートでは、世界の時価総額の3分の2に相当する2万3千社以上の企業のデータを分析した。レポートでは、スコープ3を含めたサプライチェーン全体の温室効果ガス(GHG)排出量の削減に取り組む企業は、コストの削減につながり、競争力が上がると指摘した。
GHG削減に取り組むことで得られる潜在的利益は約25兆円と予測したが、サプライチェーン全体のGHG削減に本格的に取り組む企業はまだ少ない。レポートでは、「15%しかいない」としている。
サプライチェーン全体のGHG排出量は、「間接排出量」であり、自社排出量と比べると約26倍に及ぶという。特に、課題はサプライチェーン上流部分にあるが、レポートではこの部分への脱炭素化を進めることで経済的利益を得られやすくなるとした。
CDPのサイモン・フィッシュワイカー・サプライチェーン&レポーターサービスディレクターは、「気候変動は企業にとってのリスクであるが、行動を起こす意思のある企業にとっては大きな機会にもなる」と話した。
気候リスクへの対応は、レジリエンスの向上だけでなく、顧客や投資家にとっての魅力が高まり、市場での競争力の向上にもつながることを強調した。
フィッシュワイカー氏は、「サプライチェーン全体のGHG排出量の測定と管理はビジネス上、理にかなっている。行動を起こさない企業は取り残される」と言い切った。
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