ファミリー・ビジネス(家族経営)であれば、いかに出来が悪い子息であっても、世襲に対して誰も文句は言わない。だが、企業規模が一定以上になると、まさに松下幸之助氏が唱え続けた「企業は社会の公器」という戒めが重くのしかかる。
筆者は、その境目を年商100億円程度とみている。冒頭のドラッカーの箴言の通り、それ以上の規模の企業では、創業家の子息たちにはいささか荷が重い。創業以来4代続いた名門の世襲企業サントリーが2014年10月、新浪剛史氏をトップに迎えたのも、おそらくは創業家が世襲の限界を感じ取ったからだろう。
もちろん、「良い世襲」もたくさんある。特に100年以上続く老舗においては、経営者が創業家の精神を正しく受け継いでいる限りは、子息たちは企業の求心力たりえるだろう。
「同族企業にせよ、会社を所有する一族にせよ、一族が同族企業に奉仕する場合にのみ繁栄できるということである。反対に、働く者が一族に奉仕すべくマネジメントするようでは、同族企業と一族のいずれもが繁栄できない。生き残ることさえできないだろう」(『チェンジ・リーダーの条件』)
「世襲というものは、いかに美辞麗句で飾ろうとも、その根底には『欲』があるということである。その前提を抜きにして、世襲を語ることはできない」 江坂彰 『世襲について』
(オルタナ編集長 森 摂)=この続きは、朝日新聞社WEBRONZAの筆者連載コーナーに近日掲載します