トランプ関税が日本のガソリンを急速にバイオ化する

記事のポイント


  1. トランプ関税の影響で、日本のガソリンが急速にバイオ化する可能性がある
  2. 日本が報復関税ではない形で対応するために、米国産品の輸入拡大を検討中だ
  3. 輸入拡大の候補の一つがカーボンニュートラル燃料のバイオエタノールだ

米国が関税の大幅引き上げ直後に突如、90日間の停止をするなど、先行きは不透明だ。ただ、トランプ政権が関税を引き上げた場合、日本のガソリンが急速にバイオ化する可能性がある。日本が報復関税ではない形で対応するために、米国産品の輸入拡大を検討中で、その候補の一つがカーボンニュートラル燃料のバイオエタノールだ。(オルタナ客員論説委員=財部 明郎)

トランプ関税が、日本のガソリンをバイオ化する可能性がある

トランプ関税で日本にE10ガソリンが導入される

4月2日(現地時間)米国のトランプ大統領は米国への輸入品について、ほぼすべての国に高率の関税を課すと発表した。日本からの輸入品に対しては24%という高率の関税である。(今のところ一部を除いて、この新規の関税は90日間、一時停止されている。この停止期間中の交渉次第で関税率は修正される可能性がある。)

このトランプ関税、さまざまなところに影響を及ぼすが、その影響のひとつとして日本にE10ガソリンが導入される可能性がある。

E10ガソリンとはバイオエタノールを10%添加したガソリンのことだ。日本で売られるガソリンには、バイオエタノールがほとんど含まれていないが、トランプ関税のおかげで、日本で売られているほぼすべてのガソリンがバイオエタノール入りになり、さらには近い将来、添加量が20%まで引き上げられる可能性もある。

これは、トランプ関税が輸出業者だけでなく一般の人たちにおよぼす身近な影響である。どうしてこのようなことになるのだろうか。

■「報復関税」は日本のやり方ではない

トランプ大統領が日本に高額の関税をかけるのは、日本が米国製品に対して、見えない関税を課しているから不公平だというのが理由だが、その根拠はあいまいだ。単に対日貿易赤字が大きいから、これは非関税障壁という目に見えない関税をかけているに違いないと言いがかりをつけているに過ぎない。

もちろん、これは米国側でも解っていることだろう。いろいろ理屈をつけているが、結局、目的は貿易赤字を小さくしたいということだ。このトランプ関税に対して中国やカナダ、EUなどは逆関税を米国製品に対してかけるという対抗策を早速発表している。

しかし、逆関税は日本のやり方ではない。日本はどうするか。米国の本音は貿易赤字を小さくしたいということなのだから、それなら、米国への輸出を減らすか、米国からの輸入を増やせばいいということだ。しかし、米国への輸出は減らしたくないから、結局、米国からの輸入を増やそうという話に落ち着くことになるだろう。

(この続きは)
■政府は24年秋から検討に入っていたか
■国内産業への悪影響はほとんどない
■バイオエタノールをガソリンに混ぜていいか

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財部 明郎(オルタナ客員論説委員/技術士)

オルタナ客員論説委員。ブロガー(「世界は化学であふれている」公開中)。1953年福岡県生れ。78年九州大学大学院工学研究科応用化学専攻修了。同年三菱石油(現ENEOS)入社。以降、本社、製油所、研究所、グループ内技術調査会社等を経て2019年退職。技術士(化学部門)、中小企業診断士。ブログでは、エネルギー、自動車、プラスチック、食品などを対象に、化学や技術の目から見たコラムを執筆中、石油産業誌に『明日のエコより今日のエコ』連載中

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キーワード: #脱炭素

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