記事のポイント
- カーボンニュートラルの実現に向け、GHG排出量が多い港の脱炭素化が急務だ
- 日本の港湾・臨海部が排出するGHGの規模は日本全体の排出量の6割を占める
- 港湾の脱炭素化を進め、荷主や船社から選ばれる港湾を目指す動きが広がる
2050年カーボンニュートラルの実現に向け、温室効果ガス(GHG)排出量が多い港の脱炭素化は急務だ。日本の港湾・臨海部から排出するGHGの規模は日本全体の排出量の6割を占める。政府は2020年から「カーボンニュートラルポート」の検討を本格化した。(オルタナ輪番編集長=池田 真隆)

カーボンニュートラルポートとは、GHG排出ゼロを目指して港湾機能を整備した港を指す。世界では北米の各港や、オランダ・ロッテルダム港、ドイツ・ハンブルク港などでカーボンニュートラルポートを目指した取り組みが先行する。
■船舶の「アイドリングストップ」がカギ
カーボンニュートラルポートを実現するには、「陸上電力供給システム」の整備が欠かせない。同システムは、陸上の電源と港に停泊中の船舶を接続し、船舶に電力を供給するものだ。停泊中は船内発電機の電源をオフにできるので、船舶のアイドリングストップが可能になり、GHG排出量の削減につながる。
従来、停泊中の船舶はディーゼルエンジンから船内電源を確保してきた。だが、脱炭素の潮流を受け、世界的に陸上電力供給システムへの転換が進む。世界には、陸上電力供給を義務化したり、ディーゼル運転を罰金化したりした港が増えている。
米カリフォルニア州は、全ての客船・コンテナ船に陸上電力供給を義務付けた。欧州では、2030年以降にEU主要港に停泊する客船とコンテナ船に陸上電力供給を義務付けた。欧州主要5港(アントワープ港、ブレーマーハーフェン港、ハンブルク港、ハロパ港、ロッテルダム港)では、2028年までの導入が決まっている。
■政府は港の脱炭素化に向け111億円を計上した
今後、日本の港の国際競争力を高めるためにも、陸上電力供給の導入は必須だ。日本で停泊中の船舶が排出するGHG排出量は、港湾・臨海部が排出するGHGの3割に及ぶ。低炭素だけでなく、ディーゼル燃料の消費を減らすので、コストダウンにも寄与する。

日本では国土交通省が2020年から陸上電力供給の導入に向け、検討を始めた。国交省は2024年度の概算要求で111億円を計上した。カーボンニュートラルポートの実現に向け取り組みを始めた港は、2023年10月時点の71港から2025年4月には98港に増えた。