3種の白鷺、ダイサギ・チュウサギ・コサギ――私たちに身近な生物多様性(16)[坂本 優]

さて、同じサギの仲間で、姿形も似ているこの3種の白鷺の大中小の違いは、餌となる対象の生きものや、営巣場所などに応じて進化した結果と思われる。まさに生物多様性を形づくる種の分化の見本ともいえる。この3種が同時に見られるということは、餌となる生きものの種類が豊富で、ねぐらの場となる周辺環境のバラエティにも富んでいることを示しているのだろう。

チュウサギ(上)とダイサギ(下)の頭部。ダイサギの頭部は、チュウサギに比べ細長く嘴はやや長い。眼の下に切れ長の「目じり」(口角の切れ込み)がある
チュウサギ(上)とダイサギ(下)の頭部。ダイサギの頭部は、チュウサギに比べ細長く嘴はやや長い。眼の下に切れ長の「目じり」(口角の切れ込み)がある

ちなみに、私の実感として、東京都内でも、ダイサギやコサギは、確実性高く出遭えるポイントがあるが、チュウサギは、「飛来する」とされる場所に出かけても空振りに終わってしまうことが多い。

そのチュウサギは、かつては、コサギより目にすることの多い白鷺だったと聞く。ダイサギやコサギは、各地で数を増やしているのに、なぜ、チュウサギは見かけないのか、チュウサギが適応放散した生態系の隙間は、どのような場所で、それは、今、どのような状態なのだろうか。

チュウサギは、ダイサギやコサギに比べて田畑の昆虫類を食べることが比較的多いとも言われる。そういったことも生息数の増減に関係しているのだろうか。あるいはフィリピンなど越冬地の状況が関わっているのだろうか。

左手にいるのがダイサギ。右手はコサギだ
左手にいるのがダイサギ。右手はコサギだ

身近な生きものを観察していると、多くの素朴な「なぜ?」に遭遇する。これらの「なぜ?」は、私たちもその一部をなす地球の生態系を保全し、持続可能な社会を引き継いでいくための課題でもあり、解決の糸口でもある。

体内の様々な物質を分析することで、臓器の状況や、人の健康状態を知ることができる。地球と言う一つの生命体に似た生態系システムは、各臓器のようにつながる、海洋、湿地、平原、森林、ツンドラなどの生態系によって構成されている。そして、これらの健康状態は、それぞれの場で、生物多様性の環を形づくる生きものたちが体現している。

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坂本 優(生きものコラムニスト/環境NGO代表)

1953年生。東京大学卒業後、味の素株式会社入社。法務・総務業務を中心に担当。カルピス株式会社(現アサヒ飲料株式会社)出向、転籍を経て、同社のアサヒグループ入り以降、同グループ各社で、法務・コンプライアンス業務等を担当。2018年12月65歳をもって退職。大学時代「動物の科学研究会」に参加。味の素在籍時、現「味の素バードサンクチュアリ」を開設する等、生きものを通した環境問題にも通じる。(2011年以降、バルディーズ研究会議長。趣味ラグビー シニアラグビーチーム「不惑倶楽部」の黄色パンツ (数え歳70代チーム)にて現役続行中)

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