サステナ経営塾2025: [日立製作所のサステナ経営戦略] 増田典生・日立製作所サステナビリティ推進本部主管

オルタナは2月18日、サステナ経営塾21期下期第3回を開いた。第4講には日立製作所の増田典生サステナビリティ推進本部主管(ESG情報開示研究会共同代表理事)が登壇し、「日立製作所のサステナ経営戦略」と題して講義した。講義の要旨をまとめた。

登壇する増田サステナビリティ推進本部主管

・増田主管は冒頭で、サステナビリティの最新動向を共有した。「欧州では従来の『グリーン』に加え、『レジリエンス』『経済安全保障』『産業競争力』へと政策軸がシフトしている。CSRDやCSDDDなどの制度は簡素化や対象範囲の見直し、要件の軽減が進みつつあるが、サステナビリティ自体は政策の中核に位置付けられている」と説明した。

・米国では、ESGの取り組み自体は継続されているものの、政治的配慮などから表現を控える「グリーンハッシング」の傾向が見られる。一方で、州政府や企業レベルではサステナビリティ重視の姿勢は維持されていると指摘した。

・投資家の視点では、欧州の年金基金やアセットマネージャーがサステナブルファイナンスを主導し、ESG統合の高度化や価値ドライバーとしてのESG要素の定量化、エンゲージメントの強化が進んでいる。規制対応を単なる義務ではなく価値創造の機会と捉え、「財務とESGの実践的な統合」に注力している点が特徴的だとした。

サステナ経営塾22期上期バナー

・日本については、アセットオーナーやアセットマネージャーが気候・自然関連の開示で国際基準との整合性が高く、報告の徹底度でも高い評価を得ていると紹介した。その上で、日本企業には統合報告の高度化にとどまらず、「統合経営」への転換が求められているとし、財務・サステナビリティ・人事・調達・リスク管理を横断的に連動させる必要性を指摘した。

・日立製作所は、2008年のリーマンショックによる経営危機を契機に事業ポートフォリオを大きく見直し、デジタルとグリーンを中核とする構造に転換してきた。社外取締役中心のガバナンス体制への移行など、経営基盤の改革も進めている。

・中期経営計画「Inspire 2027」では、「環境・幸福・経済成長が調和するハーモナイズド・ソサエティ」の実現を掲げ、社会価値・環境価値・経済価値の三つをトレードオフではなく「トレードオン」で同時に高めることを目指す。その実現に向け、デジタル基盤「Lumada 3.0」を活用するとした。

・同社はESGを役員報酬に組み込み、短期インセンティブ(STI)の約20%、長期インセンティブ(LTI)の約10%を連動させている。カーボンニュートラルや従業員エンゲージメントなどの指標を短期評価に組み込むことで行動変容を促し、それを長期的成果につなげる設計とした。

・さらに、過去から現在にかけたサステナビリティの取り組みと財務指標の関係を分析した結果、従業員エンゲージメントやダイバーシティ、コンプライアンス、環境対応などが財務パフォーマンスに正の影響を与える傾向が確認されたという。

・AIを活用した未来シナリオ分析にも取り組む。複数の経営シナリオを生成し、分岐点ごとの打ち手を可視化することで経営判断を支援する仕組みを構築している。従来の経験や勘に加え、データドリブンな意思決定を組み合わせる重要性を指摘した。

・講義の最後では、サステナビリティ経営の本質的課題として「社会・環境価値と経済価値の両立」が提示された。特に、収益性は高いが社会的に負の影響を持つ事業、あるいは社会的価値は高いが収益性に乏しい事業といった「トレードオフ領域」をいかにマネジメントするかが経営の核心であるとした。

・資本効率を重視するROIC経営と、持続的価値創造を目指すESG経営は対立するものではなく相互補完的な関係にあると説明した。非財務資本の強化が結果としてROIC向上につながることから、両者を統合した「統合思考」に基づく経営の実践が重要になると強調した。「サステナビリティは負担ではなく競争力の源泉であり、財務と非財務を統合した経営システムとして組み込むことが不可欠だ」とまとめた。

susbuin

サステナ経営塾

株式会社オルタナは2011年にサステナビリティ・CSRを学ぶ「CSR部員塾」を発足しました。その後、「サステナビリティ部員塾」に改称し、2023年度から「サステナ経営塾」として新たにスタートします。2011年以来、これまで延べ約700社900人の方に受講していただきました。上期はサステナビリティ/ESG初任者向けに基本的な知識を伝授します。下期はサステナビリティ/ESG実務担当者として必要な実践的知識やノウハウを伝授します。サステナ経営塾公式HPはこちら

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キーワード: #サステナ経営塾

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