「米国は自由民主主義から選挙民主主義に劣化してしまった」:欧研究所

記事のポイント


  1. 欧州の研究所が、「民主主義レポート2026」を公表した
  2. その中で「米国は自由民主主義から選挙民主主義に退行した」と指摘した
  3. 自由主義的な要素が形骸化・後退していく政治的な劣化現象を指す

スウェーデンの独立調査機関・V-Dem研究所は、「民主主義レポート(DEMOCRACY REPORT) 2026」で、「米国は50年以上ぶりに、自由民主主義国家としての地位を失う」と指摘した。「自由民主主義」から「選挙民主主義」への移行は、定期的な選挙の実施は保ちつつも、法の支配、人権の保護、報道の自由、権力分立といった自由主義的な要素が形骸化・後退していく政治的な劣化現象を指す。(オルタナ総研フェロー=室井孝之 )

「DEMOCRACY REPORT2026」

V-Dem(Varieties of Democracy: 民主主義の多様性)研究所は、2014年にスウェーデンのイエーテボリ大学のスタファン・I・リンドバーグ教授によって設立された独立研究所である。

世界中の民主主義と権威主義の度合いを数値化する国際的なプロジェクトを主導している。 4200人以上の学者や各国の専門家が参加し、600を超える民主主義の属性を測定している。

自由民主主義指数(Liberal Democracy Index: LDI)の国別順位は、179カ国中、1位がデンマーク、2位がスウェーデン、3位がノルウェーである。

G7では、フランス(9位)、ドイツ(15位)、カナダ(23位)、日本(24位)、イギリス(30位)、イタリア(37位)、アメリカ(51位)の順である。

一方、ロシアは162位、中国は171位、北朝鮮は178位だった。

「民主主義レポート2026」のエグゼクティブサマリーは、次の3点である。

1. 世界の民主主義 2025年

1)平均的な世界市民にとっての民主主義は1978年の水準にまで低下している。

1974年にポルトガルで始まった「第三の民主化の波」の成果は、ほぼ消滅している。

2)西ヨーロッパと北米における平均的な市民の民主主義レベルは、50年以上ぶりの低水準にある。これは主に、米国における独裁化の進行によるものである。

3)米国は、50年以上ぶりに、自由民主主義国家としての地位を失う。

 4)「自由民主主義(リベラル・デモクラシー)」から「選挙民主主義(エレクトラル・デモクラシー)」への移行とは、定期的な選挙の実施は保ちつつも、法の支配、人権の保護、報道の自由、権力分立といった自由主義的な要素が形骸化・後退していく政治的な劣化現象を指す。

5)2025年末時点で、世界には92の独裁国家と87の民主主義国家が存在する。

6)世界人口の74%(60億人)が現在、独裁国家に居住し、世界人口のわずか7%(6億人)しか自由民主主義国家に住んでいない。

7)民主主義のほぼすべての側面が過去10年間で広範囲にわたる衰退を記録しており、25年前と比べると劇的な逆転現象となっている。

8)表現の自由が最も大きな打撃を受けており、2025年には44カ国で表現の自由が低下している。

2. 体制転換の動向

1)世界はかつてないほど多くの国が同時に独裁化しており、「第三の独裁化の波」と呼ばれるここ数年の現象が顕著である。

2)世界人口の41%(34億人)が現在、独裁化が進む国に居住している。

3)欧州における独裁化は、EU加盟7カ国と、主要同盟国である英国と米国に影響を与えている。

3. 独裁化が進む国々

 1)世界の国々の約4分の1、44カ国が独裁化国リストに載っている。

2)44カ国の独裁化国は、24の独立した独裁化国と、20の転換期にある独裁化国に分けられる。

3)2025年には新たに10カ国が独裁化国として特定され、新たに独裁化国となった国の中には、クロアチア、イタリア、スロバキア、スロベニア、英国の5カ国が含まれている。

4)メディアの検閲は、独裁化政府の間で最も一般的な戦術であり、32カ国(73%)がこれに頼っている。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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キーワード: #ビジネスと人権

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