ウナギの危機は変わらない

2015年の土用の丑の日は7月24日と8月5日の2回。大量のウナギが日本人の胃袋に収まった。

ニホンウナギが絶滅危惧種とされ、ワシントン条約での取引規制が話題になるなか、水産庁などが、中国、台湾、韓国とともに鳴り物入りでアナウンスした「国際資源管理の枠組み」が動き出してから初の丑の日だったのだが、日本のウナギ商戦や消費にポジティブな変化はあっただろうか。「残念ながら何も変わらなかった」というのが筆者の思いだ。

まずはシラスウナギの資源管理の問題だ。水産庁は昨年9月、中国、台湾、韓国との間で今年の漁期(2014年11月~2015年10月)のシラスウナギの池入量を前年比で2割削減することに合意。

国内の養殖池に入れるシラスウナギの量の上限は21.6トンと定め、これを過去の実績に応じて各県の業者に割り当てた。他の東アジアの国や地域にも同様の割当量が定められた。

「資源管理に前進」と言われたのだが、2015年のシラスウナギの池入れ量は18.3トンと上限を大きく下回った。「シラスウナギの漁獲量が、過去12年間で3番目に多く、2012年漁期の2倍を超えていた2013年漁期を基準に2割減らしても、漁獲量削減にはほとんど効果がないだろう」との指摘は漁獲枠の決定時からあったのだが、これが実証された形だ。

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井田 徹治(共同通信社編集委員兼論説委員/オルタナ論説委員)

記者(共同通信社)。1959年、東京生まれ。東京 大学文学部卒。現在、共同通信社編集委員兼論説委員。環境と開発、エネルギーな どの問題を長く取材。著書に『ウナギ 地球 環境を語る魚』(岩波新書)など。2020年8月からオルタナ論説委員。

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