4℃上昇で日本のスキー場は7カ所しか安定営業できなくなる: 北大研究

記事のポイント


  1. 北大ら研究チームが気候変動による国内スキー場への影響を調査した
  2. 気温が「4℃上昇」すると、安定営業が可能なスキー場はわずか7カ所に
  3. 国内スキー観光は、北海道や長野など一部地域に集約していく可能性も

北海道大学と国立研究開発法人・森林総合研究所の研究チームはこのほど、気候変動が全国のスキー場営業に与える影響を分析した。全国349カ所のスキー場を対象に分析した結果、気温が産業革命前から4℃上昇すると、天然雪だけで安定的に営業できるスキー場はわずか7カ所に激減するという。日本のスキー観光が、北海道や長野県などの高緯度・高標高地域に集約していく可能性を示した。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

これまで通りにスキーを楽しむことはできるのだろうか

研究を発表したのは、北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院及び観光学高等研究センターの観光地理学者・吉沢直講師と、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所の雪氷学者・勝山祐太研究員だ。

気候変動がもたらすスキー場への影響を全国規模で研究したのは、本研究が初となる。

■「4℃上昇」すると国内スキー場は極めて限定的に

本研究は、気候変動予測データに基づいて積雪のシミュレーションを行い、スキーリフト・ゴンドラを有する日本全国349カ所のスキー場の積雪条件を推定した。

そのうえで、「過去(1951-2011年)」、「2℃上昇(2030-2091年に相当)」、「4℃上昇(2050-2111年に相当)」を比較し、自然積雪だけで年間100日以上の営業(=安定営業)が可能かどうかを基準に評価した。なお、人工降雪機の利用は想定せずに分析した。

その結果、気温が産業革命前より「4℃上昇」すると、天然雪だけで安定的に全面営業できるスキー場は全国で7カ所、一部営業が可能なスキー場は26カ所に留まり、日本のスキー場経営に極めて大きな影響が及ぶことがわかった。7カ所は具体的には北海道に3カ所、東北に2カ所、群馬県・長野県の県境で2カ所だという。

また「2℃上昇」では、北海道や長野県の高標高地域を中心に、一定の営業可能性が残ることが確認できた。

オルタナの取材に対し、北大の吉沢講師は、「国内スキー場は、現時点でもすでに気候変動の影響を受けている」と話す。

「特に西日本のスキー場で営業日数が短くなるなど、気候変動の影響を顕著に受けていることを示すデータがある。ガイドブックに載っているスキー場の数も、年々減ってきている」(吉沢氏)

「また、気候変動の影響とは言い切れないが、一部の地域ではドカ雪で、リフトが雪に埋まるなど、過去にあまり見られなかった現象が近年、みられるようになった」(同)

■スキー場の適応策には課題も

気候変動の影響は、日本に限らず、全世界のスキー場が負の影響を受けている。吉沢氏は、適応策には大きく3つあるが、どれも課題は残るという。

一つ目の適応策は、スキー場の標高を上げることだ。だが、「標高を上げる適応策は、新たな開発を伴うので問題点もあり、本当にサステナブルなのかという点では疑問が残る」(同)

二つ目は、人工雪を使うことだ。

「人工雪に関しては、雪を造るのに大量の水が必要になる。オーストリアやフランスなどでは1000台の人工雪設備を設け、山の中に景観になじむ人口池を造った事例もある。しかし、そもそも人工雪は湿球気温がマイナス2℃にならないと水を撒いても人工雪にならない。低気温であればより効率よく人工雪を造れるものの、この先も気候変動が進む中で、有効な適応策と言えるのかどうかについてはアカデミアの中でも議論が続いている」(同)

三つ目が、スキー場をあきらめ、オールシーズンで観光資源を多様化することだ。これについても吉沢氏は「地域によってできるところとできないところがある。スキー場と同じだけの経済規模に発展させることは難しい」と話す。

北大の吉沢直講師

(この続きは)
■「一部の富裕層しかスキーを楽しめなくなる」
■サステナブルな観光を考える機会に

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北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

オルタナ輪番編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部、2024年1月からオルタナ副編集長。

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キーワード: #気候変動

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