鳥たちが旅する道、フライウェイ・ネットワーク

■私たちに身近な生物多様性(21)[坂本 優] 

渡り鳥の「渡りのルート」を地球的規模で大きく束ねた、ゾーンとしての移動経路を「フライウェイ」という。世界には、9つの主要なフライウェイがあるとされる。日本は、そのうちの一つ「東アジア・オーストラリア地域フライウェイ」のパートナーシップ(EAAFP)に参加している。

EAAFPは、2002年の「国連/持続可能な開発サミット」での合意に基づき、「渡りをする水鳥とその生息域およびそれらに依存する人々の生活を守ること」を目的として2006年11月、日本とオーストラリア政府の主導により発足した。2016年5月時点で、17か国の政府と6つの国際機関、NGO、企業など、参加主体は35に及ぶ。

ソリハシシギ(左)とチュウシャクシギ(右) 撮影:東京港野鳥公園
ソリハシシギ(左)とチュウシャクシギ(右) 撮影:東京港野鳥公園

EAAFPはフライウェイを保護・保全するべく、国際的に重要な生息地、中継地を「参加地」として認証し、フライウェイ・ネットワークの構築を図っている。

今年5月には、このEAAFP、「東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップ」の「参加地」として、新たに東よか干潟が承認された。東よか干潟は、佐賀市東与賀町南端の有明海沿岸から沖合に広がる干潟だ。東よか干潟が加わることにより、同ネットワークへの参加地は17か国124か所となった。

ちなみに「参加地」は、手を挙げればなれるというものではなく、「重要な生息地」としての認定基準を満たす地域でなければならない。

その基準としては、以下が挙げられている。

・国際的に重要な湿地であること(危急種や絶滅危惧種等の集団を支えている。2万羽以上の水鳥を定期的に支えている等)

・渡りの途上にある水鳥の1つの種または亜種の個体群において、個体数の0.25%を定期的に支えている中継地・目的地であること

・渡りの期間中、一度に5千羽以上の水鳥を定期的に支えている中継地・目的地であること

また、地元の自治体や住民などの支持や継続的な保全なども要件とされる。

東よか干潟には、ズグロカモメやクロツラヘラサギ、メダイチドリ、ダイゼンの個体群の個体数の1%以上が定期的に飛来する。また、それらを含む1万羽以上の渡り性水鳥が定期的に飛来していることなどから、「参加地」として承認された。

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坂本 優(生きものコラムニスト/環境NGO代表)

1953年生。東京大学卒業後、味の素株式会社入社。法務・総務業務を中心に担当。カルピス株式会社(現アサヒ飲料株式会社)出向、転籍を経て、同社のアサヒグループ入り以降、同グループ各社で、法務・コンプライアンス業務等を担当。2018年12月65歳をもって退職。大学時代「動物の科学研究会」に参加。味の素在籍時、現「味の素バードサンクチュアリ」を開設する等、生きものを通した環境問題にも通じる。(2011年以降、バルディーズ研究会議長。趣味ラグビー シニアラグビーチーム「不惑倶楽部」の黄色パンツ (数え歳70代チーム)にて現役続行中)

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