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■緊急連載:バイオマス発電の限界と可能性(中)
再生可能エネルギーの「固定価格買取制度」(FIT)が2012年にスタートしたのを機に、国内各地でバイオマス発電事業が動き始めた。バイオマスとは自然由来の木材や廃棄物、糞尿などを指すが、実は「使ってはいけない」バイオマスもある。パーム油はその代表格だ。(編集委員・栗岡理子)
■泥炭湿地林の開発で、大量の二酸化炭素が排出
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燃やすより他に用途がなく、しかも放射能などで汚染されていない原料、例えば非汚染地域の未利用材などであれば、燃料に使ってもあまり問題はないかもしれない。しかし、海外から輸入したバイオマスを燃料とするケースでは、厄介な問題が多そうだ。なかでも問題の多いバイオマス燃料は、パーム油である。
経済産業省の調べによると、一般木材などバイオマスのFIT認定量が2017年に急増したが、そのうち燃料にパーム油を含むものの割合が相当多かったという。具体的には、2017年9月末までに認定した一般木材などバイオマスの専焼案件のうち、件数ベースで約5割、出力ベースで約4割が燃料にパーム油を含む案件だという。
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パーム油はアブラヤシの実をしぼった油で、世界の生産量の8割以上をインドネシアとマレーシアが占めている。安価で高品質なため、主に食品や洗剤の原料として世界中で幅広く使われている。日本への輸出も多い。
東南アジアで古くから自生・栽培されていたココヤシとは違って、アブラヤシは外来種だ。広大な面積の熱帯雨林を切り拓き、アブラヤシという単一外来種を植えることにより、さまざまな問題が起きる。
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例えば、プランテーション開発でオランウータンやトラ、ゾウなどが住みかを追われるなどによる生物多様性の減少である。また、熱帯林で暮らす先住民との土地をめぐる紛争や、プランテーションで働く労働者の劣悪な労働環境や児童労働などの人権問題もある。人身売買の温床になっているという指摘もある。
しかも、プランテーション開発のために泥炭湿地林の水を抜くと、それまで泥炭に蓄積されていた膨大な量の有機物の分解が一気に進み、大量の二酸化炭素が排出される。その量は、化石燃料燃焼の比ではない。
他にも、プランテーション開発に起因する森林火災や、火災による煙害など、パーム油はさまざまな社会・環境問題のデパートだ。
■パーム油認証制度が誕生するも燃料使用は想定外