書評『創発型責任経営―新しいつながりの経営モデル』

著者はこれが本質的な問題と見て、企業が社会的課題の解決に積極的に関与する「本来のCSR」を実現するには、文字通りの「レスポンシビリティ」に発想を転換、これに依拠した「創発的責任経営」を実践することが必要と説く。

この理論は、「レスポンシビリティ」を持つ社員自らが社会的課題を模索し、企業内外のステークホルダーと協働を繰り返し新たな価値や実践を生み出す経営理論である。

企業が社会に存在する意義、日常の行動の拠り所となる精神を示した企業理念と、市民感覚を持った活動主体としての社員がこの理論の根幹を成し、社会的課題を解決に向け動かす「エンジン」となる。

本書ではこの経営理論の実践事例として、オムロン、ブリヂストン、丸井、ヤフー、三菱重工の事例を取上げるが、企業理念と社員を橋渡しする手法は、経営トップによる企業理念の伝達、表彰制度、プロジェクト活動など既存の延長線上のものであり目新しさはない。

これらの企業の違いは、既存の経営手法を駆動させる根幹の発想を「レスポンシビリティ」に入れ替え、ステークホルダーとの絆を手繰り寄せ、強めていくことにより企業のCSRが公共領域に踏み出し、社会にとっても企業にとっても有用な活動に効率的に「ひっくり返し」変える点にある。

alternasyohyou

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キーワード: #CSR

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