第9回ラグビー・ワールドカップ準々決勝で、日本は南アフリカに3-26で敗れたものの、1次リーグは4連勝で突破した。10年前に日本開催が決まり、「開催国としてせめての1勝ができるだろうか」と心配していた時に比べると、日本代表は大いなる成長を遂げた。(坂本優・関東ラグビーフットボール協会理事=オルタナオンラインで「私たちに身近な生物多様性」寄稿中)

2019年9月20日、日本大会は目の前の現実となり、東京スタジアムで君が代を歌い、開幕戦開始のカウントダウンの声を張り上げている私がいた。そして、これは本当に現実なのかと思う間もなく試合は進み、日本は開幕戦を勝利で飾った。

初戦のロシア戦前半こそ硬さが見られたものの、パワー、スピードとも見違えるように逞しく鍛え上げられたジャパンは順調に勝利を重ねた。ただの一つとして勝ちを楽観できる試合のない中、ロシア戦に続き、直前まで世界一にランクされていたアイルランドにも勝利。試合後は嗚咽をこらえることができなかった。

夜、もう一度テレビで試合を見ると、網をかけるように連携し当たり負けしていないデフェンス、パワフルな突進、確実なキックと、堂々の勝利に改めてこみあげてくるものがあった。

終了間際にボーナス点をもぎとったサモア戦、中止・引き分けも想定されるなか、多くの人々の献身的努力で開催にこぎつけるや、芸術的なトライを重ね、台風の被災地含む全国に朗報をもたらしたスコットランド戦。試合のたびに勝利の雄叫びをあげ、涙した。日本は4戦全勝で一次リーグを突破し、世界の8強による決勝トーナメントに初めて進出した。

勝利の感動は、敬服すべき敗者があってこそもたらされる。ワールドカップは、普段、忘れがちなこの事実を再認識させてくれた。全力で戦い敗れた後は、潔く敗北を認めて勝者を讃たえ、勝者もまた敗者に敬意をもって接する。

観客もまた両者に拍手を惜しまない。ワールドカップの各試合を通じて当たり前のこととして示さているこれらのシーン、スタジアムを包む一体感は「ノーサイド精神」と一言で言われる。

ラグビーでは「試合が終われば敵味方はない」ということで試合終了を「ノーサイド」というが、「ノーサイドの精神」は決して無から生まれるものではない。自らや仲間に対する信頼、相手チームに対する信頼、レフリーに対する信頼、運営者に対する信頼。そして信頼とルールに基づく服従と結果の受容。これらの一角でも崩れたらノーサイドの精神は成り立たない。

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