日本人は国連を理想視しますが、実態はといえば、5つの安保理常任理事国、つまり、米、英、フランス、ロシア、中国が拒否権など圧倒的な特権を有する、いびつで非民主的な組織です。193か国が加盟する国連総会はほとんど力がありません。そもそも名称自体が第2次世界大戦の時に枢軸国と戦った当時の名前、United Nationsのまま。中国では今も国連のことを「連合国」と呼んでいます。

私が日経新聞のニューヨーク特派員として90年代半ばに国連を担当した時の話ですが、驚いたのは欧米のメディアが各社一部屋ずつ大きな部屋を与えられていたのに対し、日本の新聞社、テレビ局は狭いひと部屋に全社が詰め込まれていたことです。その部屋も国連の幹部だった明石康氏の尽力でようやく確保できたと聞きました。いまだに日本は敗戦国なのです。

そうした背景から言えるのは国連は大国主義の残滓であり、いまだに大国同士のエゴのぶつかり合いという国際政治の場となっていることです。今回のコロナをめぐる米中対立もその一環と見ることができます。テドロス事務局長は、エチオピアの保健相、外相として国内の医療改革だけでなくアフリカのエイズ・マラリア撲滅、さらにはSDGsの推進に貢献、その実績を買われて2017年に選挙を経て事務局長に選ばれています。優秀で苦労人です。

その母国を支援してくれているのが中国ということはご存じでしょう。中国は「一帯一路」構想の下、アフリカ進出を展開中です。エネルギー権益の獲得と引き換えに無償援助・借款で大型プロジェクトを請け負うことから始め、建設に必要な機材や資材、労働者まで送り込みます。エチオピアはいわばそのモデル国家で、これまでにエチオピア初の高速道路、初の風力・水力発電所、初の工業団地、グランド・ルネサンス・ダム、新国立競技場、通信網整備など様々なインフラ投資を中国から受け入れています。

国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、2019年、海外からチオピアへの直接投資は25億ドルとなっていますが、うち60%が中国からだといいます。債務額は国内総生産の59%に達しており、大半は中国からの融資とされています。こうした過剰な債務は政治的に中国の支配下に置かれかねないとして国際的な批判が高まっているほどです。

その中国は「WHOはテドロス事務局長のもと、ウイルスと戦う重要な役割を果たしている」として2,100億円の寄付を発表しました。ハイテクや貿易をめぐる米中の衝突がコロナでの対立を呼び、そのことがまた不和を一層先鋭化させるという悪循環に陥りつつあります。

さて、それを踏まえて日本のあり方を考えてみましょう。コロナひとつ考えてもこれからは国連外交が不可欠です。世界政府が存在しない以上、たとえ欠陥の多い組織であっても、国連をいかに活用し日本の国際的イニシアチブを推進するかを考えなくてはなりません。

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