世界最大の化粧品メーカーである仏ロレアル(本社パリ)は6月26日、SDGs(持続可能な開発目標)の目標年である2030年に向け、温室効果ガス排出量を2016年に比べ1製品あたり50%削減するなどの目標を発表した。「プラネタリー・バウンダリー」(地球の限界)を尊重し、生産過程での削減だけでなく、サプライヤーや消費者の行動を含めた変革を目指すことが特徴だ。(堀理雄)
「サステナビリティの達成と経済的な利益は矛盾しない。この10年で世界の全従業員とともに素晴らしい成果を出せることにわくわくしている」。記者会見で、ジャン-ポール=アゴン・グループCEOは力を込めた。
同社のサステナビリティ目標では、エネルギー効率の改善と再生可能エネルギーの導入で全拠点でのカーボンニュートラル(炭素排出の差し引きゼロ)を2025年までに達成する。製品パッケージについては2030年までに使用プラスチックを100%リサイクルもしくはバイオベースに切り替える。
緊急の環境・社会課題への支援として、サーキュラーエコノミー(循環経済)の実現や海洋・森林生態系の回復、脆弱な立場に置かれる女性への支援に計1億5000万ユーロの資金を拠出する。
さらに消費者がよりサステナブルな選択ができるようにするため、製品が環境や社会に与える影響の度合いをAからEの5段階スケールで示すラベリングメカニズム「製品の環境・社会的影響表示ラベル)」を開発。科学専門家による承認を得たラベリングで、段階的に全ブランドと製品カテゴリに導入される。
こうした取り組みの背景には、環境・社会課題の増大のなかで地球環境が限界に達しつつあるという科学者による警鐘「プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)」への危機感がある。
同社のアレクサンドル・パルト最高社会責任者(CCRO)は、コロナ危機後の経済復興を気候変動対策に資するものとする「グリーンリカバリー」に触れ、「いま私たちは臨界点(ティッピングポイント)にいる。気候変動を助長する経済・社会に戻らないためには、経済的利益を維持しながらグリーンな変革を行っていく視点が不可欠だ」と述べた。
ロレアルグループは2013年、今回の目標に連なるサステナビリティプログラムを開始。2005年比で工場と配送センターの生産量を37%増加させる一方で、CO2排出量を78%削減した。また公正な購買活動(ソリダリティーソーシング)などのプログラムを通じ、貧困を抱えるコミュニティにおいて9万人の雇用を支援した。
同グループは、企業の気候変動対策や情報公開について評価・分析するCDPのランキングで、3つの指標「気候変動」「水管理」「森林保全」すべてにおいてA評価を4年連続で取得する唯一の企業だ。