ARUN主催のビジネスコンペティション最終審査会

審査員はそうそうたる顔ぶれが並んでいます。米倉誠一郎さん(法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科教授)、渋澤健さん(コモンズ投信会長)、小木曽麻里さん(ファーストリテイリング社長室ダイバーシティ推進担当部長)などといった感じです。

小柄な女性があいさつに立ちました。ARUNの功能聡子代表です。彼女の言葉に心が震えました。「ARUNはカンボジアの社会起業家との出会いから生まれました。ARUNはカンボジア語で夜明けという意味です。活動はそこからインドやバングラデシュへ、そして今や世界へ拡大しようとしています」。

この人なくしてARUNはないと言っていいと思いますが、これほどの情熱はどこから来ているのでしょうか。功能さんは国際基督教大学、ロンドン政治経済大学院を卒業した後、民間企業に就職します。その後、栃木県那須塩原にあるアジア学院に入ります。ここがひとつの転換点ですね。高見敏弘氏がアジアの農村指導者を招いて研修を行うために設立した学校で、民族や宗教の違いを越えて公正で平和な社会を実現するための実践的な学びを行っています。そして10年間カンボジアに住み、NGO、JICA、世銀などの業務を通して復興・開発に向き合ってきました。この経験が功能さんを支え、今の彼女を駆り立てていると感じます。

ARUNの実績はどうでしょう。これまでにカンボジア、インド、バングラの3カ国で投資は9件、合計146万ドルにのぼります。成果は顕著です。228万人の農家の収入が増加。357,000人が安全な水にアクセスできるようになり、健康が改善。14,000人の女性が安心して働ける場所を獲得し、7,852人の妊婦が貧血の診断、治療を受けた結果、安全な出産につながったそうです。

さて、長時間の審査を経て、この日、最優秀賞の栄誉に輝いたのは、インドネシアのDu Anyam(ドゥ・アニャム)という社会的企業です。インドネシアの農村では、手芸品、民芸品など伝統工芸品の販売が生活の支えとなっていますが、グローバルマーケットへの展開ができていません。そこで、この会社は、農村の職人と大手家具メーカーなどをアプリでつなぐ革新的なサービスを展開しています。

選考基準は課題設定、事業の持続可能性、社会的インパクト、イノベーションなどで厳しい審査が行われました。ドゥ・アニャムは生産、在庫管理のデジタル化で効率化を図る一方、これを物流の最適化や金融アクセスに結び付けようとしている点が高く評価されました。

また、コロナで観光産業からの収入が大幅に減る逆境にもかかわらず、体制強化によりこれまでできなかったバルクオーダーに対応していることもプラス評価です。役員はすべて女性で従業員の7割が女性ということで、女性の地位向上に貢献している点も買われました。

ドゥ・アニャムは最優秀賞受賞で社会的投資資金5万ドルを獲得しました。ARUNは同社と新たなビジネスプランや資金の使途、社会的インパクトについて協議。投資実施後も、モニタリングや伴走支援をして投資先の価値を高めインパクトを出すためのサポートを行っていきます。

インパクト投資の難しさは投資からその後の評価まで終了までに時間がかかること。それだけに功能さんは起業家とのコミュニケーションを重視しています。「投資前はもちろん、投資後も定期的な起業家との電話やメール、現場訪問を通して課題やニーズを把握しています。起業家の自主性を尊重しつつ企業価値の向上やインパクトを出すためのアドバイスが不可欠です」

これからの課題について尋ねると、こんな返事がかえってきました。

「応募した社会的企業の中には日本企業との連携に関心のあるところも多い。ARUNもアジアや中東、アフリカの社会起業家にネットワークを持っています。彼らと日本企業をつなぐことで、お互いのビジネス拡大に役立てばうれしい」

夢が広がります。途上国だけではなく日本の未来にも希望をもたらす社会的投資です。(完)

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