副大統領を務めたオバマ政権も、環境対策と雇用対策を両立させる「グリーン・ニューディール」を推進した政権であり、新型コロナウイルスの影響で弱まった米国経済の復興を、環境対策を中心に展開していく手法は、オバマ政権同様と見られている。

米国は11月4日にパリ協定から離脱したが、バイデン氏は1月20日に就任すればすぐに復帰の手続きを始めることを宣言している。

バイデン氏の脱炭素戦略は、「2050年までにゼロエミッションを実現する」に尽きる。現時点では、そのために、第一期のバイデン政権の4年間で、この2050年までのプランを構築し、それに伴う事業と研究への大規模な投資を行うことが現時点でのプランだ。

大統領選挙前の7月、環境・インフラ事業に対し、4年間で2兆㌦(約210兆円)を投資する政策を発表したバイデン氏。雇用創出と合わせて、環境対策を位置付けているこの発表に際して、「健康と生命力の両面における長期的な観点から、米国経済と米国民の健康と安全のために我々ができる最も重要な投資だ」と述べた。

同氏のウェブサイトでは、次のように具体的な投資内容が示されている。
・現代的なインフラの整備
・21世紀型テクノロジーにあった米国の自動車業界の存在感
・二酸化炭素汚染フリーの電気事業を2035年までに構築
・エネルギー効率の高い建物への劇的な投資(400万戸の建物の改善と150
万戸のサステナブルな家の建設)
・クリーンエネルギーイノベーションに対する歴史的な額の投資
・サステナブルな農業や保護のさらなる発展
・環境正義の保全と、公平は経済的に機会均等の実現

こうした背景から、新政権は上場企業に対して、オペーレーションとサプライチェーンにおける環境リスクと温室効果ガスの排気量を公にするよう求めるだろうと言われている。

米国の調査会社S&Pグローバルは、すでに多くの米国企業が、投資家からの圧力で自主的に環境レポートを発表するようになっているが、いずれも不十分な点も多く、今後報告書提出が義務付けられれば、それに伴い改善環境が整えられていく可能性が高まると指摘する。

新政権発足前に、すでに米国企業は動き出していた。自動車大手のゼネラルモーターズ(GM)は、自動車排ガス規制を巡り、カリフォルニア州がトランプ政権を訴えたことを受け、政権側の支持を撤回し、「次期大統領とカリフォルニア州とともに大胆な電気自動車化に取り組む」と、メアリー・バーラCEOが表明した。

新政権の下で、厳しい立場に立たされるであろう米国の石油や天然ガス業界も、バイデン氏を受け入れる構えだ。その理由は、バイデン政権が発表したエネルギー政策にある。それによると、バイデン氏は、米国の労働者の5.6%にあたり980万人(2012年調べ)が関わる業界を、一気に一掃しようとしているわけではないことが分かるからだ。

ニューヨークタイムズの記事によれば、米国のウエストテキサス石油の生産者であるパースリー・エナジーのマット・ギャラガー社長は、「まだまだ石油と天然ガスの入る余地はある」と話す。

バイデン氏の政策には、水圧破砕法を禁止する動きはなく、再エネへの舵取りに対して、石油や天然ガス業界が自ら方向転換するための時間的猶予を与えていると考えてもいいだろう。

鍵握るEPAのリーダーシップ

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