国連サミットで採択されたSDGsのブームは衰えるところを知らない勢いです。早ければ今年中にも担当部署の国連開発計画(UNDP)が「SDGインパクト」という認証制度をスタートさせます。企業活動などがSDGsの目標(17ゴール)達成にインパクト(効果)があるかどうかをスタンダード(基準)に基づいて評価します。企業の関心が高いこのSDGインパクトがなぜ導入され、どんな意味を持つのか、また内容はどういうものか、このテーマに詳しいUNDP SDG Impact Steering Groupの運営委員のひとりである渋澤健コモンズ投信会長に聞いてみました。
価値創造のためのツール
――まず、SDGインパクトとは何でしょう。
企業の事業にSDGsを落とし込んで価値創造しようというツールですね。SDGsはカッコいいからブランディングやマーケティングに利用するというものではありません。日本企業の場合、経団連のリーダーシップもあって、SDGsには関心が高く熱心だが、自社の活動とSDGsの目標を紐づけるところも多い。その先、具体的に何をしたらいいのかわからないという企業もあるような気がするし、投資家もそう感じている。
――なぜ、この時期にSDGインパクトという新たな基準に基づく認証制度を?
SDGsのスタートは2016年で、もう5年たってしまった。2030年まで残り10年です。SDGsは達成が困難な目標もありますが、必要な資金は、コロナ前、しかも途上国だけで年間2.5兆ドルと言われています。もっと民間からの資金導入をしなければなりません。そのために、企業、債券、プライベート・エクイティ(PE)に期待するということ。ひとことで言うと目標を達成するために民間から新しいお金をつくらないといけないということです。単なる企業PRのための認証という考えはUNDPにありません。
――SDGs関連では既に原則や指針が存在します。投融資はUNEP-FIの「ポジティブ・インパクト金融原則」、債券は国際資本市場協会(ICMA)の「サステナビリティ・ガイドライン」、国際金融公社(IFC)の「インパクト投資の運用原則」などです。こういうものとどう違うのでしょう。
私が運営委員就任を依頼された時、スタンダードを作って認証を与えるという話だったので、当初はチェックリストかなにかあって、それをちゃんとやっているかどうかを見てクリアーすればUNDPが認証を与えるのかと思った。しかし、実際に出席するそうではなかったということがわかってきました。 これまでのSteering Groupの議論で、UNDPは盛んに「ハイレベル」という言葉を使っていました。確かに、似たような原則やガイドラインが他にありますが、それと同じものをまた作るということではない。もう少し包括的で理念的なものになります。