原田勝広の視点焦点:SDGインパクト渋澤氏に聞く

―ー具体的に日本企業はどう対応したらよいですか。

SDGインパクトはきわめてロジカルです。日本企業の場合、立派な創業者理念があっても、それを壁に張ってあるだけだったりする。そうではなく、基準に沿ってしっかり実践しなくてはなりません。そういう意味では、SDGsの担当者だけで申請して調えるものではなく、全社的な取り組みとトップのコミットメントが不可欠になるでしょう。日本企業にとってはかなりハードルが高いかもしれません。


SDGsに関心が高いといいっても具体的にどこから始めたらいいのかわからないというところも多いでしょう。とりあえず、統合報告書作成の際に、SDGインパクトの基準を取り入れることから始めて、自分たちで表現することをお勧めしたい。そういうツールとして使いながら、経営トップの理解を深めていくというのが現実的ではないでしょうか。

――Steering Groupの運営委員の顔ぶれは?

UNDPのシュタイナー総裁のほか、インターナショナル・チェンバー・オブ・コマースのデントン総裁や、インパクト投資の父、英国のコーエン氏。さらに中国、インド、シンガポール、香港、アフリカなど世界の金融、企業の専門家もメンバーに入っています。

2020年6月に会議に初めて出席した際、シュタイナー総裁が「SDGインパクトは決して西欧の価値観を押し付けるものではない。アジア的な価値というものもあるから」と話し、運営委員から「そうだね、中国もある」「タイもあるし」という声が出ました。その場で私は「日本を忘れないで」と注文をつけました。それほど、日本は出遅れている。ちょっとショックでした。

日本では地方でも、中小企業でも多くの人がSDGsのピンバッジを身に付けていて真面目にSDGsに取り組もうとしている。しかし、残念ながら、日本の関心の高さは世界では知られていません。こういう会議に顔を出して主張しないとやってないのと同じ。スルーされてしまう。日本企業の熱意も知られなければ評価もされない。

―ーそれは悔しいですね。

その後、コロナが広がり、昨年12月の日本向けSDGインパクト説明会は急遽、オンラインで行いました。登録者は300人で半数は企業関係者でした。私が評議員をつとめる社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(SIMI)でも説明会を開きましたが、企業関係者はSDGインパクトに強い関心を持っていました。そこで出された日本企業の声をUNDPに届けないといけないと思っています。そうしながら日本からもうまくコミットしていくことが大事です。

◆原田勝広:オルタナ論説委員。日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。明治学院大学教授に就任後の専門は国連、CSR, ESG・SDGs論。2018年より現職。著書は『CSR優良企業への挑戦』など多数。

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原田 勝広(オルタナ論説委員)

日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。サンパウロ特派員、ニューヨーク駐在を経て明治学院大学教授に就任。専門は国連、 ESG・SDGs論。NPO・NGO論。現在、湘南医療大学で教鞭をとる。著書は『国連機関でグローバルに生きる』など多数。執筆記事一覧

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