Bリーグクラブが初めて気候行動枠組み認定団体に

こうした中、昨年12月に名古屋ダイヤモンドドルフィンズはUNFCCC(国連気候変動枠組条約)から「スポーツ気候行動枠組み」の一団体として認証を受けた。同クラブのSSR(スポーツの社会的責任)アドバイザーを務めるSport For Smileの梶川三枝さんによれば、「このスポーツ気候行動枠組みに今すぐにでも調印したい、というクラブはスポーツの枠を超えて他にもいくつかある」という。

一方で、調印を足踏みさせている原因の一つが、「現状のCO₂排出計測とその改善目標の提出」だという。CO₂排出量の計測カテゴリーであるスコープ1、2、3(*)に対して、現状ではスコープ1、2の計測だけが必須であるが、スポーツクラブのCO₂排出量の大半を占める、ファンの移動に伴うCO₂排出量(スコープ3)まで含むことが世界的には推奨されている。こうした計測に関する技術的な点は、専門機関や業者との連携や協業が必須だ。

その点、名古屋ダイヤモンドドルフィンズは偶然、地元・名古屋にあるCO₂排出計測企業をクラブのスポンサーとして迎え入れることに成功した。それがきっかけとなり、晴れて日本のプロ1部所属の他クラブが成し遂げられていない国際的な連携となる「スポーツ気候行動枠組み」認定団体の一員となった。

広告宣伝費からCSR関連費への転換

コロナ禍においてスポーツエンターテイメントという側面だけで、スポンサー獲得が厳しくなっている昨今、スポーツクラブがCSRや社会貢献に重点を置くことで、共感から協力関係を築くことができる企業や組織を獲得するというビジネスモデルが、これからもっと増えていくに違いない。

梶川さんによれば、「日本から他のスポーツ団体が今後署名するための展望としては、現実的にすべての署名団体が、毎年レポートを逐一英訳し、UNFCCCと直接やりとりするという状況は明らかに無駄が多い」という。今後については、「国内の関係諸機関から協力が得られ、日本に認証ハブができれば、より多くの団体がこうした国際的な枠組みに参加できるに違いない」と話す。

*「スポーツ気候行動枠組み」とは*
2015年のパリ協定を受けて、UNFCCCとIOC(国際オリンピック委員会)との連携により、2018年12月のCOP24(第24回気候変動枠組条約締約国会議)において発足した。5つの原則からなり、スポーツ団体が自社の事業運営を持続可能な手法にしていくほか、ファンへの影響力を活用した啓発活動を推進するというふたつの側面から行動を起こすことを約束する。2021年1月時点で、184団体が署名。https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/32129/

*署名団体には、世界の著名スポーツ団体も名を連ねる(例)
・FIBA(世界バスケットボール連盟)他オリンピックスポーツの世界連盟
・各国オリンピック委員会
・NBA(米バスケットボールリーグ)
・ゴールデンステート・ウォリアーズ(NBA)
・FIFA(世界サッカー連盟)
・UEFA(欧州サッカー連盟)
・ラ・リーガ(西サッカーリーグ)
・アーセナルFC(英プレミアリーグ所属)
・ニューヨークヤンキース(米MLB所属)
・東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会

teramachi

寺町 幸枝(在外ジャーナリスト協会理事)

ファッション誌のライターとしてキャリアをスタートし、米国在住10年の間に、funtrap名義でファッションビジネスを展開。同時にビジネスやサステナブルブランドなどの取材を重ね、現在は東京を拠点に、ビジネスとカルチャー全般の取材執筆活動を行う。出稿先は、Yahoo!ニュース、オルタナ 、47ニュース、SUUMO Journal他。共同通信特約記者。在外ジャーナリスト協会(Global Press)理事。執筆記事一覧

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