「ジェンダー改革、日本も一気に進む」OECD村上氏

――日本にはどのような変化を期待しますか。

人が変わっても中身が変わらないと意味がありません。組織委の後任決定プロセスについても透明性が欠けていました。候補者検討委員会を立ち上げたのは評価できますが、ガバナンスには透明性は不可欠です。組織委の女性理事比率を4割にするという議論そのものにも透明性をもたせてほしいです。

――ジェンダー問題と透明性は表裏一体でしょうか。

多様性を担保するためには、プロセスに透明性を確保することが重要です。人は心理的に自分と同じような人と空間をともにすることが楽だと思う傾向にあります。

無意識のレベルでそう思ってしまうので、そのプロセスを可視化しないと自らの偏りに気付きにくいのです。

無意識の偏見を可視化したことでジェンダー問題を解決した有名なエピソードがあります。80年代初頭、「ニューヨーク・フィルハーモニック」は白人男性ばかりでしたが、今は半分が女性や非白人です。この変化は徐々に起きたのではなく、一気に起きました。

それは80年代に始めた「ブラインドオーディション」がきっかけです。審査員と応募者の間に幕を張り、審査員から応募者の姿が見えないようにしました。

そうすると、一気に女性と非白人の合格率が上がりました。審査員は男性や白人を優先的に選んでいたわけではなかったのですが、「無意識の偏見」で見ていたことに気付きました。

森氏の発言も「無意識の偏見」が背景にあります。組織委の女性理事の割合を4割にすること、そしてそのプロセスを可視化することで、無意識の偏見を無くしていくことが重要です。

今回の問題では、声を挙げたスポンサーと沈黙を守ったスポンサーがありますが、沈黙はSDGsや多様性を強調する企業にとってダブルスタンダードになってしまいます。今回、消費者は企業の意識の差をはっきりと見ました。

こうした情報が可視化されることが重要です。なぜなら、このような情報は投資家にとって重要であり、キャピタルマーケットに反映されるからです。

実際、欧州や米国では、ダイバーシティとプロフィタビリティ(収益性)の相関性はデータで証明されています。「女性大臣が多い国では政府への信頼度が高い」というデータもあります。

森氏の発言問題にスポンサーや政府が積極的に対応できなかったのは、おそらく自分たちができていないからということもあるでしょう。

ただ、国民が何を求めているのか、何に問題意識を持っているのかを今回の一件で認識し、お尻に火が点いたはずです。

パラダイムシフトはSNS使いこなす若者から

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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