――クォーター制についてはどう考えますか。
クォーター制の導入は、女性の登用率が一定のパーセンテージに達するまでは有効です。日本にとっては、ほかに手段がないので、考える余地は十分にあるでしょう。
特に政府のアクションには期待しています。ビジネスの世界では、機関投資家が女性の取締役がいない会社に強いプレッシャーを与えています。民間企業に対しては、グローバル市場が一定の役割を果たしていますが、政府からのプレッシャーは少ない印象です。
クォーター制はまず政府が導入し、暫定的でもいいので国会議員の女性比率を上げることから始めてほしいと思います。
ダイバーシティを進める上で「ソーシャルメディアの役割」も大きくなりました。特に若い人たちの声は、ソーシャルメディアによって可視化され多くの人に届けられるようになりました。
少子高齢化が進んでいる社会なので、選挙では若い人々の声がなかなか反映されない傾向にありますが、ソーシャルメディアが若い世代の武器となるのは間違いないでしょう。
今回の森氏発言についても、20代の若者たちがネット署名を立ち上げて、SNSで募ると15万筆以上の署名を集めました。「クラブハウス」では、ジェンダーやダイバーシティについて話し合うルームが相次いで立ち上がりました。
これまでは、社会課題について語るのは、専門家や政治評論家など限られた人が中心でしたが、誰でも議論に参加できるようになったことも大きな変化です。こうした動きはパラダイムシフトを期待させます。
――ダイバーシティやジェンダー問題に関して、日本が変わるには何がカギでしょうか。
日本は熟考する社会です。言い換えれば右や左を見る意識が強いとも言えます。しかしそれは、変化が起きるまでの準備期間は長いものの、一度決まると行動までは早い、と捉えることもできます。
脱炭素社会へのシフトも副業の導入も、決まれば多くの会社が着手しました。ダイバーシティの推進についてもトップが早く決断し、実践してほしいと思います。