世界最大の広告イベント「カンヌ国際クリエイティブ祭」の取材を10年以上続ける河尻亨一氏は、炎上CMが多発する状況に関して、「広告の作り手、広告主、CMを見る側、炎上を報道するメディアの4つの観点から考えていく必要がある」と言う。

河尻氏によれば炎上にも「良い炎上」と「悪い炎上」があるという。消費者が積極的に見たいわけではない情報を発信するCM(広告)は、まず見てもらう必要がある。目立たなければ意味がない。話題喚起のために、誇張的表現を採用しやすく、「多かれ少なかれ炎上を目的とするのがCMの宿命」(河尻氏)。

視聴者の共感度が高いCMは「良い炎上」とも言えるが、「悪い炎上」は消費者からのバッシングにさらされ、企業が築き上げたブランドの価値を大きく損なう。広告制作者には、「共感」と「不快」の間のギリギリの線を的確に見極める資質や才能が求められる。

河尻氏は、「ある意味、この両者は表裏一体でもあり見極めも難しい。その壁を突破できるのが優れた制作者だろう」と話す。

地方CMの「良い炎上」の傑作として河尻氏は、宮崎県小林市のCM「ンダモシタン小林」を挙げた。フランス語に聞こえるご当地方言のナレーションとともに美しい風景の映像を連ねて、移住促進を図る意図だった。

有名タレントを起用したり、大がかりなPRをしたりしたわけではないが、「面白い」と口コミで広まり、Youtubeでは230万回再生されている(2017年8月)。

「悪い炎上」について、河尻氏は広告代理店やCM制作会社だけでなく、広告を発注した企業側の問題も大きいと指摘する。

「炎上した事例には、予算やスケジュールに無理があるのではないかと感じさせるものもある。その割にYoutubeの再生回数などで過大な目標を設定されていると、容易に注目を集めやすい過激ネタに走らざるを得なくなる。発注サイドが何を伝えたいのかが曖昧なまま制作に突入するケースも多く、現場のプレッシャーは大きいと思う」

「悪い炎上」ネタに食いつくメディアにも責任はある。

「PV目的で炎上CMネタが好きなメディアもある。良い噂より悪い噂が広まりやすいのは世の常ではあるが、社会的意義の高いCMもある。ケースによっては批判も必要だが、もっと評価や応援に力を入れても良いのではないか」

最後に、「見る側」の問題についてはこう述べた。

「昔から視聴者はCMに対して悪口を言っていた。SNSなどの普及により、その悪口が可視化され、CMを見てない人にも伝播していくようになった。すべてがネットで可視化される時代だからこそ、心温まる良い炎上とは何かを真剣に考えるべきだろう」

制作会社、クライアント企業、メディア、視聴者の4者が絡み合い、火が消えない状態が生み出されるというのが、河尻氏の分析である。「予算がない、スケジュールも短い、スキルも乏しいなかで制作されたCMに対して、みんなでバッシングする状況そのものに違和感がある」と言い切る。

「カンヌでは広告の力で社会的課題をどう改善できるのか真剣に議論されている。悪い炎上ばかりフォーカスされる状態が続くと、日本という国のブランドまでおとしめてしまう」

この状況を変えていくためには、「一方的に誰かのせいにするのではなく、なぜそんなことになるのかをまずは根っこから俯瞰的に捉えること。その際にメディアの果たすべき役割は大きい」と強調した。

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