※この記事は2021年3月30日に発売する雑誌オルタナ64号「グリーンな脱炭素 グリーンな脱炭素」の先出し記事です。オンライン有料会員に入会されると、本誌も無料でご自宅やオフィスに郵送します。
現行の地球温暖化対策税は、欧州各国の炭素税に比べて数十分の1の税率にとどまる。エネルギーや税制に詳しいジャーナリスト、町田徹氏は「菅政権が『脱炭素』を宣言した以上は、本格的な炭素税を導入し、一本化することが必要だ」と主張する。
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「政府が廉価で安定的に水素を供給してくれない限り、水素還元製鉄に本気で取り組むつもりはない」─。ある大手鉄鋼会社は昨年暮れ、筆者の取材にこう言い放った。
この社の強みは、革新を長年積み重ねてきた高炉を使う製鉄技術だ。鉄鉱石(主にFe₂O₃)から鉄(Fe)を取り出すのに、炭素(C)の塊である石炭を使い、不純物の酸素(O2)をCO2として排出する。表向き、世界の鉄鋼会社は、高炉に代わる技術として、水素(H2)を使って酸素を除去し、水(H2O)として排出する「水素還元製鉄」の開発を掲げてきた。
が、その実態は口先だけだった。その後、欧州で新技術の実用化競争が本格化したのに、日本では昨年秋の菅首相による「脱炭素宣言」後もコスト高騰を嫌い、口先対応で済まそうとする姿勢に変化がない。
ジレンマ打開に必要なのが、カーボンプライシングであり、中でも本格的な炭素税導入が重要である。割高な再生可能エネルギーの需要を喚起するよう、割安な化石燃料由来の電気、ガス料金を高くする仕組みに変えていくものだ。
注意すべきは、納税さえすれば、半永久的に大量のCO2を排出し続けられると企業に勘違いさせないことである。エネルギー効率が悪ければ割増税を課すとか、年を経れば増税する仕組みのほか、ごまかしを防ぐために検査・監視機関の充実も重要だ。
石油石炭税の特例の廃止も肝になる。「鉄鋼業は国際競争をしている」とか、「沖縄電力は化石燃料しかない」といった理由で石油石炭税を免除する特例が多い。しかし、こうした業界はCO2の大口排出源であり、例外扱いを続ければ炭素税が骨抜きになる。