2020年の難民認定47人、NGOが制度の改善訴え

出入国在留管理庁の発表では、不認定となった方の国籍として、スリランカ、トルコ、ネパールなどが挙げられています。諸外国ではこれらの国の出身者の多くが難民として認められており(※1)、このような違いを生む要因として、例えば以下の4点が挙げられます。

(1)不適切な審査基準:国際基準に沿った解釈を

日本では審査の様々な面において、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の見解など国際的な基準から離れ、難民の定義について独特の解釈が行われています。例えば、難民の定義の一要素である「迫害」について、重大な人権侵害や、累積する差別は含まれないなど狭く解釈しています。

また、迫害主体から特定(個別把握)されていることが、迫害を受ける「おそれ」の条件であるかのように捉えられていますが、これは難民条約の趣旨に合わない誤った解釈です。

政府は、法改正と共に難民該当性に関する規範的要素の明確化を行うとしています。難民認定状況の改善のためには、これらの不適切な審査基準を見直した上での「明確化」でなければなりません。

(2)適正手続保障の不在:公正で透明性のある審査を

難民申請者が行政手続上、不利な立場に置かれないようにするための仕組みが十分に整えられていない点も課題です。

例えば、一次審査では入管との面接(インタビュー)に代理人が同席することができません。弁護士等の代理人の同席は、難民申請者にとって面接時の心理的負担の軽減や法的支援の質の向上につながります。諸外国では一般的に行われており(※2)、政府の有識者会議の報告書(※3)でも「代理人の立会いを認める範囲」の在り方の検討が必要とされました。

その他、面接の録音・録画や供述調書の開示といった、公正で透明性のある審査のための施策を求めます。

(3)審査請求の形骸化:本来の役割を果たせる制度に

2020年に難民認定された者のうち、審査請求により認定されたのは1名のみでした。一次審査の誤った判断を正すという本来の役割を果たすためには、審査の独立性をより高めるなど、抜本的な見直しが必要です。また、審査請求に対する決定が行われた者のうち、約90%には口頭意見陳述が実施されていませんでした。自らの意見を述べる機会を得られないままに不認定となった方が多くいると考えられ、適正手続保障の観点からも改善が必要です。

(4)難民を専門的に扱う機関の不在:独立性のある機関の設立を

出入国在留管理庁が難民認定業務を担当している点も、難民認定を適切に行う上での課題です。出入国管理と難民認定は、その目的も、必要な知識や経験も異なります。昨年の政府の有識者会議の報告書(※4)でも「難民認定業務の専門性・独立性をより高めるため」の組織の在り方に関する検討が求められました。

また、今年2月に国会に提出された「難民等の保護に関する法律案」では、難民の認定や権利保護を行う組織として、「難民等保護委員会」の設立が規定されています。これらを踏まえ、難民の保護を目的とした業務を行うことができる組織・人員の確保を求めます。

2.難民申請者の処遇の課題

yoshida

吉田 広子(オルタナ副編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。執筆記事一覧

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キーワード: #SDGs

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