中国は気候変動問題の「悪役」か

■中国は気候変動問題の「悪役」か

気候変動枠組みにおいては、温室効果ガス、とりわけCO2の総量だけ見て1人当たりの量を見ない、現在だけ見て過去を見ない、排出だけ見て吸収を見ない、同一時系列の排出原単位(GDP当たりのCO2排出量)だけ見て各発展段階のそれを見ないのでなく、歴史的、客観的、公平かつ全面的にこの問題を考えるべきである。

中国は世界最大の温室効果ガス排出国であるばかりか国際の法的拘束力ある削減目標すら打ち出さないことから、気候変動問題の「悪役」として見られてきた。

しかしその一方で中国が省エネやクリーンエネルギーの大幅な導入、並びに大規模な植林などで大きな成果を上げていることは見過ごされている。

■「ポスト京都」に向けての提案

中国は近い将来に自国に法的な数値目標を負わせることに一貫して反対し続けてきたが、無期限に反対するわけではないし、決して温室効果ガス削減に寄与する対応策の実施に反対するものでもない。

むしろ「気候枠組み」といった「外圧」を国発展の駆動力(内圧)としてうまく利用する動きさえ見える。ポストCOP15の課題として、交渉の基礎となる合意形成、中期削減目標、測定・報告・検証可能性、長期目標と資金問題などが挙げられる。そこで、ポスト京都に向けての中国の参加について、以下のような提案をする。

(1)「共通だが差異のある責任」原則を堅持する。

この原則は気候変動枠組みにおける先進国と途上国の対立を解消する国際社会の共通認識を凝集したものである。米国をはじめとする先進国は率先して温室効果ガスを削減することが、国際社会の気候変動対策の努力を正しい道に沿って前進させる上で極めて重要である。先進国と発展途上国は、気候変動対策において共に積極的な行動をとるべきである。

(2)公平で実効性のある参加基準を確立する。

科学的知見に基づいて、地球全体で「どこまで削減しなければならないか」の排出許容総量が決まったら、その次に、どのように割り振るのかを考えていくことになる。その割り振り方は、公平でなければならない。すべての人々に平等な機会を有するのは民主主義のもっとも基本原則である。

そこで、著者は、一人当たりの排出権利を同等にするための「総量規制下で一人当たりの均等な排出許容量」を提案した。許容量(キャップ)を超えた人は、排出権購入で賄う、いわゆる「キャップアンドトレード」方式で公平性と実効性を実現する。

(3)中国参加の3段階論

中国やインドなど発展途上国をアメリカと同じスタートラインに立って、削減義務を負わせるのは、道義的にも不公平である。中国には3つの段階に分けて「参加」を求めるべきである。

第1段階は自発的段階(数値目標は持たないものの、自発的に削減方策を講じる。~2012年)、第2段階は自主的段階(法的拘束力のない数値目標を自主的設定する。2013~2020年)、第3段階は強制的段階(法的拘束力のある数値目標を負う。2020年~)とする。事実上、ポスト京都枠組みの構築に向かって、中国は第2約束期間における自主目標(国内には法的拘束力のある数値目標)をCOP15で公表し、すでに自発的段階から自主的段階に向けて行動し始めているといえよう。

結果として、COP15で中国が自主目標を公示して以降、インド、韓国、メキシコ、インドネシアなどの国々も自主目標を発表し、上述したような第2段階を歩み始めた。気候交渉は長期的なロードマップが必要である。

(4)中国国内の3地域区分

経済格差、地域エネルギーの特徴、CO2排出量の差異などを総合的に考慮して、中国国内を先進地域、中進地域、後進地域の3地域に区分し、「共通ではあるが差異のある責任」原則を国内版としての気候変動対策を講じ、国内版CDM制度を設計する必要がある。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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