一般社団法人JEAN(東京都国分寺市)の小島あずさ事務局長によると、海岸での人工芝の散乱は既に1997年には確認されていた。
「通常の清掃では拾いきれない小さなごみを、区画を区切ってふるいを使い調べたところ、無数のプラ破片の中にたくさんの緑色の破片が見つかった。プラスチック工業連盟経由で人工芝メーカーの方に見てもらったところ、人工芝であることが確認できた」とのことだ。
1981年から海や湖の水中清掃などを年間30回ほどのペースで行っている海をつくる会(横浜市)の坂本昭夫事務局長も、「人工芝の破片で砂浜が緑色っぽく見えることもある。川周辺の海岸で流域に人工芝を使っている競技場が確認できないところでも人工芝の破片が多いので、今回の結果は私たちの認識とも一致する」と評価している。
「これからは、人工芝が使われている場所を特定し、マップ化する必要がある。その上で、海洋プラごみの原因はレジ袋だけではなく、人工芝も同様であることをチラシなどで使用者や一般にも知らせていくことが重要だ」(坂本事務局長)
競技場用人工芝については今後の課題
人工芝のマイクロプラスチックは緑色の破片部分だけではない。競技場の人工芝はプラスチック製の芝糸の隙間に、ゴムチップや珪砂などを充填することで、クッション性を高めている。アスリートが動き回れば、芝からゴムチップが飛散する。
ゴムチップには、車の廃タイヤなどを細かく切断したものが使われることも多い。欧州などで以前から問題になっているマイクロプラスチックは、芝糸よりむしろこのゴムチップなのだ。
欧州化学物質庁(ECHA)は2019年、意図的に添加するマイクロプラスチックの制限を提言したが、充填用の人工芝用ゴムチップもその対象だ。
今回の調査で、この充填剤についてピリカに尋ねたところ、「比重が重く水に沈むため、水面調査では見つかりづらい。今年は水底調査で見つかることを期待していたが、人工芝の充填剤だと確信できるマイクロプラスチックは見つからなかった」という。
マイクロプラスチックになりにくい人工芝や充填剤の開発は、今後の課題だ。ピリカの調査結果については「マイクロプラスチック流出状況データベース」に掲載されている。