「松がつなぐあした」を読む

東北復興で防潮堤建設の是非が議論されていた時、コンクリートの高さばかりが焦点だったような虚しい記憶があります。樹木を植える海岸林、とりわけクロマツは陸前高田の「奇跡の1本松」の印象が強烈で、津波には無力だと皆が思い込んでいたからでしょう。私もそのひとりです。

そんな折り、手に取った「松がつなぐあした」(愛育出版)というおしゃれなタイトルの本は、「津波で流された海岸防災林をつくり直す」活動の記録ですが、そんなことは間違いで、松林の有効性と、なにより人づくり、地域復興の街づくりに、海岸林の再生がいかに大きな力を発揮するかを教えてくれます。この本の筆者は、私の日本経済新聞時代の友人で元論説委員の小林省太さんです。震災から10年の節目の今春、贈呈を受けたものですが、忙しさにかまけて机の片隅に積んでおいたものです。

しかし、いったんページを開くと、その興味深い内容に引き込まれてしまいました。クロマツによる海岸林再生プロジェクトをリードしたのは、1961年に国学者、中野與之助が設立した公益財団法人オイスカ。アジアを中心に農業支援や植林を進めてきた日本の国際協力NGOの草分けです。インドのリンゴ栽培指導で剪定をしたところ、そういう習慣がない地元の人たちが「日本人が勝手に大事な木を切ってしまった」と怒り、裁判沙汰になりそうになったが、秋になって見たこともないおいしくて大きいリンゴが実り、大喜びされた、というエピソードを聞いたことがあるNGOです。

発芽したばかりのクロマツの芽(オイスカ提供)

オイスカ提唱「名取の100㌶に植林」

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