One Show、クリオ賞と並ぶ世界3大広告賞の一つ「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル(通称:カンヌライオンズ)」。エントリー数・参加者数ともに最大級で、世界のコミュニケーションのトレンドに、多大な影響を及ぼしている。昨年はコロナ禍で中止となったが、今年は6月21日から25日に「Cannes Lions Live」としてオンラインで開催される。SDGsの流れは近年カンヌライオンズでも強まっており、コロナ禍でその傾向はさらに強まっていると予想される。本稿ではカンヌライオンズの傾向からみるコミュニケーショントレンドの変化とSDGsの関係について、後編では今年の受賞作からカンヌライオンズが指し示すSDGsコミュニケーションのこれからについて考えていく。(伊藤 恵・サステナビリティ・プランナー)

■ブランドはpurposeを問われる時代へ

カンヌライオンズでは、社会課題の解決に貢献したクリエイティブを評価するための賞が近年相次いで創設されている。2015年に性差別や偏見を打ち破るクリエイティブを讃える賞としてGlass Lionが、2018年には部門としてSDGs部門が新設された。

しかし、社会課題を解決するクリエイティブは、もはやこのような賞や部門の枠を越えてアワード全体で評価される傾向になってきている。商品をよくみせるクリエイティブから、社会をよくする、ソーシャルグッドなクリエイティブへ。そしてここ数年では、企業は社会貢献活動としてのみならず事業として社会にどのような価値を提供できるかが問われるようになってきている。

これが「パーパス(purpose=目的)」という概念で、これからの企業の在り方についての大きなキーワードとなっている。前回のカンヌライオンズでも最も強く語られていたのが、このパーパス、つまり企業・事業・ブランドの社会的存在目的への意識の変革だった。

企業とクリエイターは社会的な目的意識を問われる時代となり、その意識を持って、マーケティングに取り組む必要があると語られており、これは、SDGsともシンクロする概念といえる。

■ブランドパーパスを体現した受賞作作品

タイ最大手のディベロッパー「AP Thailand」がおこなった「The Unusual Football Field Project」。バンコクの南にあるクローントゥーイ区では、形のいびつさから建物を建てられないデッドスペースが街の治安や景観悪化を招くという社会課題に対して、この場所をサッカーグラウンドに変えていくというクリエイティブで解決した事例だ。

犯罪率の低下や景観美化、コミュニティの生活向上に結びつき、不動産会社として地域の土地の価値を上げることにも成功した。いびつな土地の形にあわせデザインされたサッカーグラウンドのデザイン性も高く評価され、2017年カンヌライオンズのデザイン部門でもグランプリを獲得している。

■これからの時代、企業が発信すべきメッセージとは

いま日本ではにわかにSDGsがブームのような状況になり注目される一方で、実態が伴っていないのにSDGsへの貢献を発信する「SDGsウォッシュ」が批判される事例も相次いでいる。

原因のひとつとして、SDGsを自社の事業と結びつけられていないことが挙げられる。もちろん社会貢献活動自体は意味のあることだが、直接的に事業と関係のない社会貢献活動をおこなっても、たとえば本業では環境負荷の高い生産体制のままだと、その取り組みは不十分であると批判される可能性がある。

すでにグローバル企業では企業経営の柱としてSDGsを取り入れる企業がふえている。彼らにとってSDGsは自社のブランドイメージアップのためではなく、今後生き残っていくために必要な戦略なのだ。

「これから企業として社会にどのような価値を提供できるか」という問いの答えがパーパスになり、そのメッセージとして結実したものが、今年のカンヌライオンズでも多く登場することになるだろう。次回は今後発表される受賞作品から、SDGsコミュニケーションの今後を考察していく。