内閣府の食堂で取り扱う卵が、ケージ飼育の卵から平飼いか放牧で育てた「ケージフリー卵」に切り替わっていたことが分かった。食堂の運営会社がオルタナ編集部の取材に答えた。国際社会では、バタリーケージ(集約飼育檻)を使わない養鶏など「アニマルウェルフェア」(動物福祉)を重視しており、内閣府もこの流れに対応した形だ。(オルタナS編集長=池田 真隆)
今回、ケージフリー卵に切り替えたのは、内閣府の中央合同庁舎第8号館にある食堂。この食堂は総合給食大手ニッコクトラスト(東京・中央)が、内閣府から運営を委託されている。食材の調達先は同社が決めており、内閣府に報告している。今回の切り替えは内閣府が指示した訳ではないが、結果として、ケージフリー卵に切り替わった形だ。
これまではケージ飼育の卵を調達していたが、ニッコクトラスト社が国際的なアニマルウェルフェアの高まりを受けて、衛生的に配慮した飼育方法で育てる埼玉県内の業者に切り替えた。切り替え時期は8月10日で、この日以降は100%ケージフリー卵を取り扱うことになる。
ケージフリー卵に切り替えたことで、調達コストは上がったが、ニッコクトラスト社が収支を吸収する。食堂で提供するメニューの価格は上げない。取り扱い量は1カ月で30ケース程度だという。
日本の政府機関の食堂として、100%ケージフリー卵を取り扱うのは初のことだ。認定NPO法人アニマルライツセンターの岡田千尋代表理事は、この切り替えについて、「重要な転換点」と話す。
「企業と交渉する中で、『国が動けば』という言い訳をよく聞いていました。今回の内閣府の決断は国が果たすべき、重要なポイントの一つです。さらに、今年2月には小泉環境大臣が『バタリーケージは推奨されるものではない』と発言しています。これと合わせれば、国はすでに1歩を実質的に踏み出していることが分かります。具体的な取り組みを進めることができていない企業にとって、もう言い訳が通用しない所まで来ています。日本も世界と同じく、ケージフリーの方向性にあるのだと示された瞬間です」